医療法人化の失敗事例10選!開業医が法人成りするデメリットとは

医療法人化の失敗事例

今回の記事では、医療法人化の失敗事例についてまとめていきます。

医療法人化には多くのメリットがある反面、実はデメリットも多いです。一旦医療法人化してしまうと簡単には戻せないため、デメリットに気づかず医療法人化を進めてしまって後悔する医師も結構います。

あとは医療法人化に対する理解が足りておらず、医療法人化をするべきタイミングでしていないというケースも多いですね。

そこで今回は医療法人化に関する失敗事例を10個集めてみました。

もし医療法人化を考えているなら今回ご紹介する失敗事例を参考にして、同じことをしないように注意してください。

 

医療法人化の失敗事例10選

医療法人化について、今回は失敗内容別に10個の失敗事例を紹介していきます。

  1. 医療法人化をして資金繰りが悪化した
  2. 医療法人化の手続きを甘く見ていた
  3. 息子に事業継承をさせようとしたけれど……
  4. 医療法人化よって経営が圧迫された
  5. 利益が大きいのに医療法人化を検討しなかった
  6. 親族への役員報酬が損金不算入となってしまった
  7. 親族への退職金が損金不算入になってしまった
  8. 後継者がいなくて引退できない
  9. 自分の役員報酬を高額にし過ぎた
  10. 事業拡大をしようとして……

これらは実際にやりがちな失敗なので、反面教師としてぜひ参考にしてください。

医療法人化事例

 

医療法人化の失敗事例1.「医療法人化をして資金繰りが悪化した」

個人医院から医療法人化したことで資金繰りが悪化してしまった失敗事例をご紹介します。

とある医師が、個人クリニックの運転資金をかなり借りている状態で医療法人化をしました。

ところが個人事業主時代に運転資金として借入した負債は、原則法人で引き継ぐことができません。つまり個人時代の運転資金は、その医師個人が返済する必要が出てきます。

そうなると当然、運転資金の返済を行うために自分の役員報酬を上げなければいけません。役員報酬は累進課税で税率が決まるためその分も計算すると、役員報酬はかなりの高額になってしまいました。

その結果、役員報酬が高くなった分法人に残るお金が少なくなり、しかも法人契約の生命保険が大きな負担となったことで、その医師の病院は医療法人化をきっかけに資金繰りが悪化してしまったのです。

医療法人化をする場合は税理士やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談し、法人化したあとの財政状況をしっかりと見極める必要があります。

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医療法人化の失敗事例2.「医療法人化の手続きを甘く見ていた」

医療法人化の手続きに失敗し、ベストな法人化のタイミングを逃してしまったという失敗事例もあります

とあるクリニックの話ですが、過去に株式会社を自分で立ち上げたことがある事務員がいたため、医療法人化の手続きをすべてその方に任せてしまったそうです。

しかし、医療法人化は普通の法人化より手続きが煩雑です。しかも各都道府県の認可を受ける必要があり、認可を受けられるタイミングはおおよそ年2回とスケジュールが決まっています。

結果的にそのクリニックは医療法人化の手続きに手間取ってしまい、認可を受けるタイミングを逃したことで、ベストなタイミングでの医療法人化ができませんでした。

これから医療法人化をされる場合は、普通の法人化とは違うものだということを認識し、税理士や司法書士など専門家に相談することをおすすめします。

ちなみに医療法人化の手続きについては別記事で詳しく解説しているので、そちらも併せて参考にしてみてください。

⇒医療法人化の手続きやスケジュールを解説!まずやるべきこととは?

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医療法人化の失敗事例3.「息子に事業継承させようとしたけれど……」

ある個人医院を営んでいる方のお話ですが、この方は医院の事業継承にまつわる失敗をされました。

この方は自分が年齢を重ねてきて、さらに最近体調を崩してしまったこともあり、勤務医として働いている息子にそろそろ自分の個人医院を継いでほしいと考えたそうです。

ただ、個人事業主として事業継承をしてしまうと個人医院の相続に多額の相続税がかかってしまいます。そこで医療法人化することで医療法人の財産権を手放し、相続税がかからないように対策を講じました。

ところが、いざ医療法人化して事業継承をしようとしたところ、なんと息子から「医院を受け継ぐ気はない」と言われてしまったそうです。

実はこの方は、事業継承についてしっかりと息子さんとお話をされていなかったようで、息子が医院を継いでくれるものだと勝手に思い込んでいたようでした。一方、息子さんはそんな約束をした覚えはないということで、両者のあいだで意見の食い違いが起こってしまったのです。

結果的に事業継承は行われず、その方はあまり良くないタイミングでただ医療法人化をしただけになってしまいました。

事業継承を目的として医療法人化する場合は、事業を継いでくれる人としっかりと話し合い、準備をしたうえで行いましょう。

一度医療法人化すると、個人医院に戻す場合は法人を解散する必要が出てくるため、簡単には戻せなくなってしまいます。

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医療法人化の失敗事例4.「医療法人化によって経営が圧迫された」

とある地方のクリニックは、そこまで大きくは儲かっていなかったものの、事業の公共性が高いという理由で医療法人化して、結果的に失敗してしまいました。

なぜ失敗してしまったのかというと、医療法人化することでコストが増えてしまい、採算が合わなくなってしまったからです。

たとえば医療法人化すると、従業員の社会保険加入が義務化されます。(個人医院の場合、常勤5名以上で強制加入)

社会保険については原則会社と従業員で半額ずつの負担です。そのため、小規模かつギリギリの経営状態で医療法人化をしてしまうと、その負担が重くのしかかり、収支が合わなくなってしまうことがあります。また経理が煩雑化することで人件費が余計にかかるようになったり、交際費の全額を経費で落とせなくなったりと、医療法人化することでコストが上がる部分は意外と多いです。

医療法人化をする場合は、そのあたりのコスト計算も行う必要があります。

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医療法人化の失敗事例5.「利益が大きいのに医療法人化を検討しなかった」

医師1人体制で歯科クリニックを経営している方がいましたが、この方は利益が大きくなっても医療法人化をせず、毎年余分な税金をかなりの金額払い続けていました。

この方は医療法人という言葉の響きで大きな病院を想像してしまい、1人で経営しているのに医療法人化は普通しないだろう、と考えていたようです。

ただ医療法人化をする人の多くが、実はいわゆる一人医師医療法人です。

個人事業主の場合は累進課税で計算されてしまうため、最大で年間所得の45%を所得税として納税しなければいけなくなってしまいます。一方、医療法人の法人税は15%から23.2%と、45%と比べるとかなり低いです。

目安として年間所得が1800万円を超えるようなら、一人医師であっても医療法人化を検討した方が良いでしょう。ちなみに医療法人化のタイミングについては別記事で詳しく解説しているので、そちらも確認してみてください。

⇒医療法人化するべき5つのタイミング!売上の目安や条件について解説

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医療法人化の失敗事例6.「親族への役員報酬が損金不算入となってしまった」

ある病院が医療法人化したことを機に親族を理事にして役員報酬を支払っていたのですが、過大報酬という理由で損金不算入とみなされてしまいました。

損金不算入とは、税金の計算をするうえで費用として認められないもののことです。今回の場合、親族に支払った報酬が費用として認められず、税金の計算をするときに損金計上できなかったということを指します。

医療法人化したさいに親族を役員にして報酬を分散することで節税効果を狙う場合がありますが、仕事内容に対して不当な額の報酬を支払うと費用として認められないことがあるので注意が必要です。

どれくらいの報酬が適正なのかということは一概に言えませんが、「常勤か否か」、「どのような仕事内容をしているのか」、「同種同規模の医療法人の役員報酬はどれくらいなのか」といったところが判断基準になります。

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医療法人化の失敗事例7.「親族への退職金が損金不算入になってしまった」

先に紹介した報酬と近いケースとして、理事を務めていた親族への退職金が損金不算入とみなされてしまった、という失敗談もあります。

持分なしの医療法人を設立した方がいたのですが、その方は法人の利益を親族の退職金として回収しようとしました。ところが親族の方の仕事内容と退職金の額が不釣り合いであるとされ、損金不算入、つまり税金の計算をするうえでの経費として認められない、となってしまったのです。

理事への退職金は報酬と同様、「常勤か否か」、「どのような仕事内容をしているのか」、「同種同規模の医療法人の役員報酬はどれくらいなのか」といったところが判断基準となります。その点を踏まえ、あまりに法外である場合は過大報酬とされ、損金不算入と見なされてしまうケースがあるので注意しましょう。

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医療法人化の失敗事例8.「後継者がいなくて引退できない」

一人医師医療法人としてクリニックを経営されている医師で、後継者がいないことから引退できないと悩んでいる方もいました。

この方は60歳を超えて体調を崩してしまったことをきっかけに引退を考えたのですが、後継者がいないため引退できない状況に陥っているそうです。

そもそも医療法人化したはいいものの、後継者がいなくて困っているという人は意外と多くいます。医療法人の場合、原則として事業継承を受ける側が医師免許を所有していなければいけないため、普通の法人に比べて後継者不在に陥りやすいです。

しかもこの方の場合、持分なしの医療法人であるため財産権がありませんでした。この場合、後継者が見つからずに解散することになると、その法人の残余財産は国に帰属することになります。

そのため最悪、今まで築き上げてきたクリニックとしてのブランド、患者さん、財産などを完全に手放さなければいけなくなってしまうのです。

このような事態を避けるためにも、医療法人化する場合は自分が引退するときの後継者問題についてもしっかり考えておく必要があります。

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医療法人化の失敗事例9.「自分の役員報酬を高額にし過ぎた」

自分の役員報酬を高額に設定しすぎたため、医療法人化による節税効果が小さくなってしまった、という失敗事例もあります

法人化によるメリットとして大きいのが節税効果です。これは個人の所得税率が累進課税(最大45%)で計算されるのに対し、法人税の税率は最大23.2%までしか上がらないという点が大きな要因となっています。

ところがその方はあまり税金のことを考えず、自分の所得をかなり高額に設定し、使わない分を貯金に回していました。

確かに法人化することで法人をお金を自由に使えなくなるため、あるていどは個人の所得として持っておく方が良いという考え方もあります。ただ明らかに不必要な分まで報酬に回してしまうと、余分に税金が取られてしまうほか、法人の資金繰りが悪化する可能性もあります。

役員報酬については本当に必要な分を見極め、また親族を理事に入れての所得分散も考えたうえで、節税効果が高くなるように設定しましょう。自分で計算するのが難しくても税理士に相談すれば適切な報酬額が割り出せるはずです。

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医療法人化の失敗事例10.「事業拡大をしようとして……」

ある個人クリニックの医師が、事業を拡大して介護事業を行いたいということで医療法人化を検討しましたが、結果的に断念することになりました。

個人事業主の場合、行える事業は診療所・病院のみで、しかも開設できる施設数も1ヶ所のみに限られています。

一方、医療法人化すればほかの事業を展開できるようになり、分院も可能となることから、その方は事業拡大のための医療法人化を検討したわけです。

ところがその方は医療法人化に関する条件にとらわれ過ぎて、介護事業を行うための基準を見落としていました介護事業を行うためには、人員基準、設備基準、運営基準を満たす必要があるのですが、その準備ができていなかったのです。

結局その方はすぐに基準を満たすことができなかったため、介護事業への進出を一旦諦め、医療法人化も見送ることになりました。

事業展開を行う場合は医療法人化だけでなく、その事業を行うための基準についてもしっかりと確認し、クリアする必要があります。

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医療法人化のデメリット

医療法人化デメリット

ここまでにさまざまな失敗事例をご紹介してきましたが、ここからもわかる通り、医療法人化にはメリットもある反面デメリットも存在しています。

とくに注意が必要なデメリットは以下の通りです。

  1. 事務処理が煩雑になる
  2. 財産を自由に使えない
  3. 社会保険の加入が必須になる
  4. 交際費の一部が経費にならない
  5. 個人による運転資金の借入が引き継げない
  6. 医療法人化の手続きに手間と時間がかかる

医療法人化をする場合は、これらのデメリットをしっかり考慮したうえで行う必要があります。ちなみに医療法人化のメリット・デメリットについては別記事でまとめているので、1度目を通しておいてください。

⇒開業医と医療法人の違いとは?メリット・デメリットを詳しく解説

 

さらに医療法人化については、デメリットを理解したうえでも想定外のことが起こってきます。

たとえば「後継者不足の問題」や「経費にできると思っていたものが損金不算入になってしまう問題」などは、なかなか想定が難しいかもしれません。

 

だからこそ医療法人化をするさいは、たくさんの医療法人化を経験してきた専門家(税理士)に相談することを強くおすすめします。

何度も医療法人化に関わってきた税理士であればさまざまなケースを想定することができます。今が適切なタイミングかどうかの判断はもちろん、想定しておくべき事態についても色々と教えてもらえるはずです。

ただし、1つ注意点があります。

税理士といっても自分たちの利益だけを優先し、やたらと医療法人化を勧めるような事務所はダメです。医療法人化をさせればその分の手数料を儲けることができるため、とにかく医療法人化を勧めてくるような会計事務所も残念ながら存在しています。

実際、そういった税理士の言いなりになって医療法人化をしてしまい、それこそ今回紹介させていただいたような失敗をする方も多いです。

そうならないためにも、信頼できる税理士を探すこと、そして税理士の言いなりになるのではなく、矛盾点や疑問点が生じてきたら迷わず確認することを心掛けてください。

 

手前みそではありますが、もちろん私たち池上会計にご相談いただいても大丈夫です。まだ医療法人化をするタイミングでないと判断した場合はその理由を添えてしっかりとお伝えさせていただきますし、ご質問に対してもクイックレスポンスで早急にお返事させていただきます。

今なら初回相談は無料とさせていただいているので、医療法人化について考えている場合は、ぜひ1度ご連絡ください。「今相談している会計事務所がこう言っているんだけど本当はどうなの?」といったセカンドオピニオン的なご質問でも大丈夫です。

以下の媒体であればどこからでも受付しているので、ぜひ気軽にご連絡ください。

 

【まとめ】医療法人化は計画的に行うべき

今回は医療法人化の失敗事例についてご紹介してきました。

すべての失敗に言えることですが、医療法人化で重要なのはしっかり計画を立てて行うことです。無計画に医療法人化をしてしまえば、それが失敗に繋がります。

たとえば節税できるはずが余分な税金を支払うことになってしまったり、事業継承の対策として行ったはずが後継者が病院を継いでくれなかったり、といった感じですね。

かといってもちろん、医療法人化をしない方が良いというわけではありません。利益が上がっているのに医療法人化をしなければ、それこそ余分な税金をかなりの金額納税することになってしまいます。

医療法人化にはするべきタイミングとしてはいけないタイミングがあります。だからこそ医療法人化は専門家の意見を聞いて、計画的に行いましょう。然るべきタイミングで行えば、医療法人化のメリットをしっかりと享受できるはずです。