今回は「一人親方の法人化」について解説をしていきます。
「最初は個人事業主として始めたものの、仕事が増えてきて法人化するべきか迷っている」という一人親方は多いです。
法人化すれば節税効果があったり、仕事を請けるときの信用度が高くなったりと、さまざまなメリットがあります。
しかし一方でデメリットもあるため、実際に法人化するべきかどうかは現状を把握したうえで適格に判断しなければいけません。
そこで今回は「一人親方が法人化するメリット・デメリット」、「一人親方が法人化するべきか確認する方法」、「一人親方が法人化する手順」について解説していきます。
あなたが法人化前の一人親方であれば、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
一人親方の定義とは
一人親方とは、主に建設業において従業員を雇用せず、自分1人で(もしくは家族からの協力を得て)仕事を請け負う者のことをいいます。
建設業界におけるフリーランスに近いイメージですね。
基本一人で仕事を請け負うため、自由な働き方ができるのが魅力です。
ただし、仕事を取るための営業も自分1人でしなければいけなかったり、規模や信用といった観点から請けられない仕事があったりと、一人親方だからこそ大変な面もあります。
一人親方が法人化する6つのメリット
一人親方が法人化するメリットには以下のようなものがあります。
- 税負担が軽くなる
- 経費にできる範囲が広がる
- 社会保険に加入できる
- 社会的信用が増す
- 決算月を自分で決められる
- 責任範囲が有限になる
このように、一人親方が法人化するメリットは多岐にわたります。
1つずつ詳しく解説していきましょう。
1.税負担が軽くなる
一人親方が法人化することで、税負担が軽くなる可能性があります。
これは個人事業主の所得税率が累進課税なのに対して、法人化すれば法人税率が適用されることが大きいです。
累進課税の場合、所得額に応じて以下のように税率が上がっていきます。
引用:国税庁
一方で法人税の場合の法人税率は以下のとおり、あるていど一定です。
引用:国税庁
このように所得税が最大45%の税率であるのに対し、法人税は最大で23.2%となっていることから、利益が大きければ大きいほど節税効果が見込めるわけですね。
2.経費にできる範囲が広がる
一人親方が法人化することで、経費にできる範囲が広がります。
これは法人化によって経費にできる項目が多くなるからです。
たとえば「自分や家族に対する給与」、「社宅」、「生命保険料」など、個人事業主のときには経費にできなかったものまで経費にできます。
そのため法人化によって、かなり大きな節税効果を得られます。
3.社会保険に加入できる
一人親方が法人化することで、社会保険に加入できるようになります。
ちなみに社会保険とは、「健康保険」、「介護保険」、「厚生年金保険」、「労災保険」、「雇用保険」の総称です。
これら社会保険に加入できるようになれば、保険料の負担を抑えらる可能性があり、また保証も手厚くなります。
とくに扶養に入れる家族がいる場合は、大きな負担減となるでしょう。
4.社会的信用が増す
法人化することで社会的な信用が増し、以下のようなメリットを得られます。
- 請けられる仕事の幅が広がる
- 資金調達がやりやすくなる
- 求人で人が来やすくなる
とくに仕事の受注については、法人にしか発注しないという業者もいるため、大きなメリットであると言えます。
また、銀行から融資を受ける場合も法人の方が有利です。
さらに今後人手を増やしたいと考えている場合も、法人の方が人が来やすくなります。
このように社会的信用が上がることのメリットは大きいです。
5.決算月を自分で決められる
個人事業主の場合は決算月が12月で固定されていますが、法人であれば決算月を自分で決めることができます。
そのため、繁忙期をずらして決算月を設定することも可能です。
個人事業主の場合は2月中旬~3月中旬に確定申告を行うことになりますが、その時期は建築業界の繁忙期と被っているため、確定申告に苦しめられている一人親方はたくさんいます。
その点を考えれば、決算月を自由に設定できることのメリットは大きいと言えるでしょう。
6.責任範囲が有限になる
法人化することで「法人の責任」と「個人の責任」が区別されるようになるため、責任範囲が有限となります。
個人事業主の場合、賠償責任はすべて自分にかかってくる無限責任です。
一方、法人の場合は、出資額分のみを負担すれば良い有限責任になります。
つまり、法人であればたとえ倒産したとしても個人の財産を守ることができるわけです。
ただし、個人の名義で会社の保証人になっている場合はその限りではないので注意してください。
一人親方が法人化する5つのデメリット
ここまで一人親方が法人化するメリットについて解説してきましたが、一人親方の法人化には同時に以下のようなデメリットも存在しています。
- 法人設立に手間とお金がかかる
- お金を自由に使えなくなる
- 事務作業の負担が増える
- 赤字でも住民税の支払いが生じる
- 税務調査に入られやすくなる
法人化するなら、これらのデメリットについてもきちんと把握しておかなければいけません。
1つずつ解説していきましょう。
1.法人設立に手間とお金がかかる
法人を設立するには手間とお金がかかります。
「法人設立の手続き」は個人事業主として開業するよりも数段複雑です。
とくに普段から現場に出て忙しく作業をしている一人親方にとっては、かなり面倒に感じるでしょう。
ちなみに法人化にかかる費用については、株式会社で18万円~24万円、合同会社で6万円~10万円程度です。
法人化の手続きを専門家に委託する場合は、別途その費用もかかってきます。
ただ忙しい一人親方にとって1番ネックになるのは、やはり手続きにかかる手間の方ではないでしょうか。
池上会計では「法人化の手続きを丸投げしていただけるパック」のご用意があります。
もし法人化手続きの手間がネックになっているという場合は、ぜひ1度詳細を確認してみてください。
2.お金を自由に使えなくなる
法人化することで、個人事業主時代のように自由にお金を使えなくなります。
法人化することによって、法人の資産と個人の資産がきっちりと分かれるためです。
仮に法人の売上を個人事業主時代のように自由に使ってしまうと横領として扱われる可能性があります。
こういった点をわずらわしいと感じる一人親方は多いのではないでしょうか。
3.事務作業の負担が増える
法人化することで、税務などの事務作業が個人事業主時代よりも増えます。
事務作業を家族に協力してもらっているならまだ良いですが、一人親方自身が事務作業までやっている場合は現場作業に加えての作業になるため、かなりの負担増だと言えるでしょう。
そのあたりの作業をあるていど税理士に任せることもできますが、もちろん依頼料がかかります。
とはいえ節税効果や仕事の受注増といったメリットもあるので、そのあたりと比べてみて、法人化すべきか否かを総合的に判断してください。
4.赤字でも住民税の支払いが生じる
個人事業主のときは赤字であれば住民税の支払は発生しませんでしたが、法人の場合は赤字であっても最低7万円の法人住民税が発生します。
これは法人であればすべてのものが納めなければいけない法人住民税の均等割があるからです。
たとえば一人親方の場合、自分が体調を崩してしまうと仕事を請けられなくなってしまいますし、それが原因で赤字になってしまうケースもあり得ます。
それでも法人であれば、住民税を納税しなければいけないわけです。
仕事ができない状況においては、決して小さな負担とは言えないでしょう。
5.税務調査に入られやすくなる
法人化することで、税務調査に入られる確率が上がると言われています。
実際、法人と個人事業主を比べると、法人の方が税務調査に入られることが多いからです。
もちろん法人の方が全体的に売上規模が大きいという理由ありますが、それでも税務調査のリスクはやや上がると考えておいた方が良いでしょう。
たとえ普段から正しく税務処理をしていたとしても、税務調査が入ればかなりの手間とプレッシャーがかかります。
一人親方として今法人化するべきか確認する方法
ここまで一人親方が法人化するメリットとデメリットを解説してきましたが、法人化するべきか否かを判断するうえで重要なのはメリットとデメリットのバランスです。
メリットの方が大きいなら法人化を検討するべきですし、逆にデメリットの方が大きいなら法人化は見送った方が良いということですね。
今が法人化するべきタイミングかどうか迷っているなら、まずはメリットとデメリットをそれぞれ洗い出して、見比べてみると良いでしょう。
とはいえ「実際にどれくらいの節税効果があるのか」、「デメリットがどのていどのものなのか」というのを自分自身で正確に把握するのは難しいと思います。
そこでおすすめなのが、税理士などの専門家に頼ってみることです。
とくに法人化案件をたくさん扱ってきた専門家であれば、正確な数字を出してくれることはもちろん、想定していなかったリスクなどについても教えてもらえます。
ちなみに私たち池上会計も、今までに多くの法人化案件を取り扱ってきました。
現在、初回相談を無料とさせていただいているので、法人化について悩んでいるならぜひ1度ご連絡ください。
一人親方が法人化する手順
一人親方が法人化する手続きの流れは以下のとおりです。
〇法人化の手続き
- 会社の基本事項を決める
- 会社用の印鑑を用意する
- 定款を作成し、認証を受ける
- 資本金を払い込む
- 登記申請をする
〇法人化後の手続き
- 会社名義の銀行口座を開設する
- 個人事業の廃業手続きを行う
- 登記事項証明書、印鑑証明書を取得する
- 法人設立届出書を提出する
- 社会保険、労働保険の加入手続きを行う
基本的な流れでいえば、ほかの業種の個人事業主が法人化するときと変わりません。
法人化手続きの詳細については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて確認してみてください。
⇒個人事業主から法人化する手続きを流れで解説!かかる費用や時間は?
一人親方の法人化で注意すべきこと
一人親方の法人化については、1つ注意しなければいけないことがあります。
それは建設業許可をはじめとする許認可の扱いです。
法人化した場合、そのままでは個人事業主時代の建設業許可は使えません。
新たに取得するか、もしくはあなた個人から法人へ承継するための手続きをする必要があります。
これは、あくまでも法人格とあなた個人は別人格という扱いになるからです。
※以前は建設業許可の引継ぎはできませんでしたが、令和2年10月1日の法改正により法人への承継が可能になりました
許認可なしで許認可が必要な事業をしてしまうと刑罰の対象となるため、注意してください。
【まとめ】一人親方でも法人化は選択肢に入れるべき
今回は一人親方の法人化について解説をしてきました。
手続き的な話をすれば、基本的には他業種の法人化と大きな違いはありません。
しかし、一人親方ならではの働き方もあるため、法人化するべきかどうかについてはそれも踏まえたうえで考える必要があります。
また、許認可の手続きについても忘れずにやっておきましょう。
ちなみに法人化について悩んでいるなら、ぜひ1度池上会計にご相談ください。
私たちは多くの法人化案件を取り扱ってきたため、あなたが今本当に法人化するべきかどうかを正確に見極めることができます。
また「法人化の手続きを丸投げしていただけるパック」のご用意もあるので、手間をかけずに法人化の手続きを進めていただくことも可能です。
現在、初回相談を無料とさせていただいているので、ぜひ1度気軽にご連絡ください。