今回は、「副業の法人化」について解説をしていきます。
今は昔に比べて、会社員として働きながら副業をする人も増えてきました。
そのうえで色々な情報にリーチしやすくなったことから、本業の収入を副業の収入が上回ってしまう人も増えてきています。
実際、サラリーマンが本業だったけど副業が伸びてきてそのまま会社を辞めてしまう、という人も今は多いです。
このように副業で大きく稼ぐことも夢ではないわけですから、中には「副業を法人化して節税した方が良いのでは?」と考える人も出てきます。
本業以上の収入になっているのなら、なおさら税金面は気になりますよね。
そこで今回は、「副業を法人化するメリット・デメリット」や「副業を法人化するべきタイミング」について解説をしていきます。
すでに副業をしている、もしくは副業に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
副業を法人化する7つのメリット
副業を法人化するメリットには以下のようなものがあります。
- 法人の方が最高税率が低い
- 所得を分散できる
- 使える経費の幅が広がる
- 資金調達がやりやすくなる
- 有限責任になる
- 決算月を自分で決められる
- 社会的な信用度が向上する
これらのメリットがあるからこそ、副業をわざわざ法人化するわけですね。
それでは1つずつ解説していきましょう。
法人化のメリット1.「法人の方が最高税率が低い」
個人事業主に課せられる所得税に比べ、法人に課せられる法人税の方が最高税率が低いです。
個人事業主の場合、所得税は累進課税で所得額によって税率が上がっていき、最高で45%になります。
引用:国税庁_所得税の税率
一方、法人税の場合、以下の表の1番上にある「普通法人」のところを見ていただけばわかるとおり、税率は高くても23.20%です。
引用:国税庁_法人税の税率
このように最高税率の差があるため、所得額によっては法人化した方が大幅に節税できる可能性があります。
ただその一方で、所得額が低い場合は個人の方が得になるケースもあるので、後述しますが法人化するタイミングには注意しましょう。
法人化のメリット2.「所得を分散できる」
法人化すれば、所得を分散することで節税できるメリットもあります。
たとえば同居している配偶者を取締役にして報酬を支払うことで、世帯年収は下げずに自分と配偶者で所得を分散することが可能です。
個人の所得が下がれば税率や保険料も下がるので、その分節税に繋がるわけですね。
また副業を法人化する場合だと、あなたの報酬額を抑えることで副業の収入が目立たなくなるメリットもあります。
法人化のメリット3.「使える経費の幅が広がる」
個人事業主と法人では、法人の方が経費として使える項目の幅が広がります。
たとえば法人の場合、個人では経費にできない生命保険や福利厚生費、健康診断の費用などを経費にすることが可能です。
そのため個人事業主に比べて法人の方が、より節税の工夫をしやすくなります。
法人化のメリット4.「資金調達がやりやすくなる」
個人事業主より法人の方が資金調達はやりやすくなります。
たとえば金融機関から融資を受ける場合、法人は個人と会社の資産が切り分けられていて明確になっているという理由で、個人事業主よりも融資がおりやすいです。
また助成金や補助金についても、個人事業主より法人の方が選択肢が多く、同じ制度でも高額になるケースがあります。
法人化のメリット5.「有限責任になる」
法人を設立した場合、あなた個人と法人は別人格として扱われるため、責任範疇が有限となります。
個人名義で借入をしたり保証人になったりしていなければ、基本的に会社の資産以上の責任を負うことはありません。
これが個人事業主の場合、事業で失敗して借金を負った場合は個人の借金となるので、自己破産するまで免責はされません。
昔に比べて経営者保証を求めない融資も増えているので、ビジネスでチャレンジしたい場合は大きなメリットとなるでしょう。
法人化のメリット6.「決算月を自分で決められる」
法人化することで決算月を自分で決められるようになります。
個人事業主の場合は、1月~12月で締めて2月~3月に確定申告をするというサイクルで固定されていますが、法人の場合はこのサイクルを自由に設定可能です。
とくに副業でやっている場合、本業の繁忙期と確定申告の時期が被っていると負担が増えます。
その点法人であれば、比較的暇な時期を決算月に設定できるわけです。
法人化のメリット7.「社会的な信用度が向上する」
個人事業主より法人の方が社会的な信用度は高いです。
たとえば企業によっては、個人事業主には仕事を発注しないところもあります。
またBtoCの事業をしている場合も、法人であった方がよりお客様を安心させやすいです。
事業をより発展させていきたい、より良い仕事を獲得していきたい、と考えているなら、法人化を検討してみても良いでしょう。
副業を法人化する5つのデメリット
副業を法人化するメリットもありますが、逆に以下のようなデメリットもあるので注意しなければいけません。
- 会社の設立、解散には費用や手間がかかる
- 決算処理の手間が増える
- 赤字でも住民税がかかる
- 社会保険の加入が必要になる
- 勤め先にバレるリスクが上がる
それぞれ無視できないデメリットなので、しっかり把握しておいてください。
法人化のデメリット1.「会社の設立、解散には費用や手間がかかる」
法人の設立には費用も手間もかかります。
同様に解散時にも費用と手間がかかるため、その点は念頭に置いておきましょう。
個人事業主のように届出だけすれば良いというわけではありません。
ちなみに会社設立時の費用については、株式会社でおおよそ22万円~25万円、合同会社なら10万円~11万円がかかります。
それに加えて資本金も必要となりますし、専門家に依頼する場合はその依頼料もかかってきます。
とはいえ、副業を法人化しようと考えている時点でそれなりの利益が出ていると思うので、どちらかというと問題になるのは手間の方ではないでしょうか。
とくに副業だと本業との兼ね合いもあるので、普通の法人化より色々と大変です。
現在、池上会計では「法人化の手続きを丸投げしていただけるパック」をご提供しているので、法人化を考えているならぜひ1度ご確認ください。
法人化のデメリット2.「決算処理の手間が増える」
法人の決算処理は個人事業主よりも煩雑なため、事務処理の手間が増えるのも大きなデメリットです。
会計事務所に依頼する場合はその費用がかかってきますが、副業でやっている以上手間の方が問題になるケースが多いかと思うので、基本的に法人化するなら会計事務所と契約を結ぶことをおすすめします。
ちなみに多少の会計業務であれば、配偶者などの親族を取締役にしてお願いするという手段もあります。(決算処理全般を任せる場合はある程度の知識が必要)
法人化のデメリット3.「赤字でも住民税がかかる」
個人事業主の場合、赤字であれば税金の支払いはありませんでしたが、法人化すると赤字でも税金の支払いが発生してしまいます。
法人になると、法人住民税の均等割りという税金がかかってくるからです。
1人だけの小さな法人であっても年額7万円程度かかってくるので、節税の計算をするときはこの点も把握しておきましょう。
法人化のデメリット4.「社会保険の加入が必要になる」
法人化して報酬の支払いが生じた場合、社会保険への加入が義務付けられます。
自分に報酬を支払う場合も同様で、労使折半となりますが、自分の法人なので実質全額払っているのと変わりません。
法人化のデメリット5.「勤め先にバレるリスクが上がる」
本業の勤め先が副業禁止であった場合、バレたときに法人化しているとより大きなトラブルに発展する可能性があります。
それこそ法人化しているとなると、向こうからすればもはやどちらが本業なのかわからない状態です。
そのような状態で副業が見つかったとあれば、本業への悪い影響も疑われかねません。
副業を法人化する場合は、先に本業の勤め先に許可を取ることをおすすめします。
副業を法人化するべきタイミング(売上いくらから?)
副業の法人化を検討するべきタイミングとしては、以下が挙げられます。
- 年間の利益(所得)が800万円を超えたタイミング
- 課税売上高が1,000万円を超えたタイミング
- 事業拡大のために必要だと判断したタイミング
- 自分以外に代表取締役になれる人が見つかったタイミング
もしあたながやっている副業がこれらのケースに当てはまっているのなら、1度法人化を検討してみても良いでしょう。
それでは1つずつ解説していきます。
年間の利益(所得)が800万円を超えたタイミング
年間の利益(所得)800万円を超えてきたら、1度法人化した場合の納税シミュレーションをしてみても良いでしょう。
なぜならさまざまな点を加味して、年間利益がおおよそ800万円あたりから法人の方が税金が安くなる傾向にあるからです。
とはいえ、もちろんさまざまな条件によってこの金額は変わってくるので、あくまでも目安であり、一概には言えません。
もしあなた個別のケースが気になるなら、ぜひ1度池上会計にお問い合わせください。
今法人化するべきなのか、もしくはまだしないべきなのか、しっかり判断してお答えさせていただきます。
法人化に関するご相談は初回無料とさせていただいているので、ぜひ気軽にご相談ください。
課税売上高が1,000万円を超えたタイミング
もし今まで免税事業者であったなら、課税売上高が1,000万円を超えたタイミングで法人化を検討してみてください。
課税売上高が1,000万円以下の場合、免税事業者でいることで消費税の納税を免除されます。
そして課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後から課税事業者として納税することが義務付けられているんです。
この2年後というのがポイントで、個人事業主から法人化した場合はカウントがリセットされます。
つまり、課税売上高が1,000万円を超えた翌年に法人化すれば、課税事業者になるのはそこから2年後で良いわけですね。
ただし、2023年10月から導入されているインボイス制度の影響ですでに課税事業者になっている場合は、このメリットを得ることはできません。
事業拡大のために必要だと判断したタイミング
副業の事業を拡大するために法人になる必要性を感じたときも、法人化を検討するタイミングです。
個人事業主から法人化することで、以下のようなメリットがあります。
- 請けられる仕事の幅が広がる
- 信用や信頼が高まる
- 資金調達がやりやすくなる
ただし、あくまでも副業なので、どこまで事業を拡大するかはよく考えてください。
本業にする気がある場合は良いですが、あくまでも副業としてやっていきたい場合、下手に事業を拡大すると忙しくなってしまい、本業に影響が出てしまう可能性があります。
自分以外に代表取締役になれる人が見つかったタイミング
本業をしながら法人の代表になることに抵抗を感じていた場合、自分の代わりに代表取締役になってくれる人が見つかったタイミングも法人化を検討してみるべきでしょう。
たとえば親族や信頼できる友人が自分の代わりに代表の座についてくれる場合などですね。
あなたが代表になることを避ければ、その分本業の勤め先にバレる心配や、大きなトラブルに発展する心配は低減されます。
会社に副業がバレるケースとは
法人に限った話ではありませんが、本業の勤め先に副業がバレるケースで多いのは以下の要因です。
- タレコミが入ってバレる
- SNS経由でバレる
- 住民税でバレる
- 公開法人データでバレる
誰かのタレコミで副業がバレる、というケースは意外と多いので注意が必要です。
たとえば同僚に副業の話をしてしまい、それを妬ましく思った同僚が上司に告げ口をする、というケースも考えられます。
またSNSで事業に関する発信をしている場合、そこからバレてしまうケースも昨今は多いです。
とくに顔出しでSNS運用をやっている場合はリスクが高いと言えるでしょう。
あとは昔からの定番で、住民税がらみでバレるケースも多いですね。
今年度の住民税は前年度の収入によって決定し、あなたの勤め先は特別徴収でその住民税を代わりに納めてくれています。
そのため副業で収入が上がると、特別徴収している住民税の金額が不自然に上がってしまうのです。
このようなことを避けるため、副業の住民税は特別徴収ではなく、自分で納めるようにしましょう。
あと注意が必要なのが、公開法人データです。
あなたが代表となって副業を法人化した場合、その情報はさまざまなところに露出します。
たとえば名刺や会社のHP、許認可、助成金の応募など、代表者の名前はさまざまなところに記載されるのです。
名前だけならバレない可能性も高いですが、あなたが珍しい氏名の持ち主であったり、副業用の名刺がうっかり見つかったり、顔写真付きで露出したりしているならその限りではありません。
副業を法人化する手続き
副業を法人化する場合、以下のような手順で手続きを進めていくことになります。
〇法人化の手続き
- 会社の基本事項を決める
- 会社用の印鑑を用意する
- 定款を作成し、認証を受ける
- 資本金を払い込む
- 登記申請をする
〇法人設立後に必要な手続き
- 会社名義の銀行口座を開設する
- 個人事業の廃業手続きを行う
- 登記事項証明書、印鑑証明書を取得する
- 法人設立届出書を提出する
- 社会保険、労働保険の加入手続きを行う
基本的に副業であろうとなかろうと、個人事業主から法人化する手続きの流れは変わりません。
法人化するには、株式会社でおよそ2週間~3週間、合同会社でおよそ1週間~2週間の時間がかかります。
法人化の手続きについて詳しくは「個人事業主から法人化する手続きを流れで解説!かかる費用や時間は?」の記事で解説しているので、法人化を考えているなら併せてそちらも確認してみてください。
ただ前述したとおり、副業を法人化する場合は専門家に依頼するのが一般的です。
法人化の手続きを自分でやるのはかなりの手間であり、本業との兼ね合いもあって時間を作るのが難しいからです。
池上会計では「法人化の手続きを丸投げしていただけるパック」をご提供しているので、法人化を考えているならぜひ1度ご確認ください。
【まとめ】メリットが高いなら副業の法人化もあり
今回は副業の法人化について、メリット・デメリットやタイミングについて解説をしてきました。
普通に個人事業主が法人化するのに比べて本業をやりながら副業を法人化するわけですから、その分ハードルは高いです。
ただ今の時代、副業が本業の収入を軽く超えてしまうケースも多々あるので、利益が予想外に大きかったり、将来的に副業の方を本業にしたいと考えていたりするなら、1度法人化について検討してみても良いのではないでしょうか。
とはいえ、心配なのは本業の勤め先とトラブルにならないかどうかです。
副業を法人化するなら、勤め先の規約などをよく確認し、トラブルなどが起こらないかたちで行うようにしましょう。