今回は、「美容室(理容室・美容サロン)の法人化」について解説していきます。
美容室を開業していると、お客様や従業員が増えてきたタイミングで法人化を意識する方も多いのではないでしょうか。
実際、法人化には節税や信用度の向上といったメリットがあります。
しかし同時に法人化にはデメリットも存在しているため、法人化するべきかどうかはしっかりと精査しなければいけません。
そこで今回は美容室について、「法人の割合」や「法人化のメリット・デメリット」、「法人化するべきタイミング」を解説していきます。
美容室を開業しているなら、ぜひ参考にしてください。
そもそも法人化する美容室は多い?
2023年6月27日に総務省から発表された令和3年経済センサス活動調査結果によると、美容室の法人の比率は理容業で8.6%、美容業で24.7%でした。
つまり、美容室のおよそ75%が個人事業主であるということですね。
4社に1社が法人化していると考えれば、決して少ないとは言えない数字です。
美容室を開業してすぐに法人化するケースは少ないので、多くの美容室が経営が軌道に乗ったタイミングで法人化を選択していることになります。
美容室が法人化するメリット
美容室が法人化するメリットは以下のとおりです。
- 税制上有利になる
- 取引先や金融機関からの信用が高くなる
- 採用がしやすくなる
- 赤字(欠損金)を10年間繰り越せる
- 個人の責任範疇が制限される
- 決算期を自分で決められる
- 社会保険に加入できる
とくに美容室の法人化で大きなメリットとなるのが、「節税効果が得られる」、「事業拡大がしやすくなる」の2点ではないでしょうか。
たとえば節税効果についてですが、個人事業主の所得税は累進課税となるため最大で45%の税率となりますが、法人化すれば、法人税の最大税率は23.4%です。
さらに美容師である自分自身に給料を支払うことで所得分散ができ、納める税金をさらに抑えることができます。
もちろんあるていど利益や売上が出ていることが条件ですが、場合によってはかなり大きな金額を節税できるでしょう。(法人化を検討するべき利益と売上の具体的な目安は後述します)
また「美容室の店舗増やしたい」、「採用を強化したい」という場合も、法人化のメリットを強く感じられるはずです。
法人となれば信用度が増すので融資も受けやすくなりますし、採用でもより人が集まるようになります。
そのため個人事業主のままでいるよりも、事業拡大がスムーズに進む可能性はあります。
そのほか、法人化することのメリットについては「個人事業主から法人化するタイミングは?メリットや手続き、費用について解説」で詳しく解説しているので、そちらを参照してみてください。
美容室が法人化するデメリット
美容室が法人化するデメリットは以下のとおりです。
- 法人設立、閉鎖には手間や費用がかかる
- 従業員も社会保険に加入させないといけない
- 事務作業の手間が増える
- 赤字でも納税が発生する
- 交際費のルールが厳格化する
やはり1番考えなければいけないのが、法人化にかかわるコストです。
金銭的な面ではもちろん、法人化や日々の経理といった事務作業にかかる手間についても軽視できません。
それらを踏まえたうえでなお、節税効果や法人として信用度を高める効果が高いのなら法人化を検討するべきです。
しかしそうでないなら、法人化については1度立ち止まった方が良いでしょう。
法人化のデメリットについて、詳細は「個人事業主から法人化するタイミングは?メリットや手続き、費用について解説」で解説しているので、併せてチェックしておいてください。
美容室が法人化を検討するべきタイミング
美容室が法人化を検討するべきタイミングとしては、以下が挙げられます。
- 年収(利益、所得)が800万円を超えたタイミング
- 年間の売上が1,000万円を超えたタイミング
- 事業拡大(多店舗展開)を考えているタイミング
※法人化のタイミングについて詳しくは「個人事業主から法人化するタイミングは?メリットや手続き、費用について解説」で解説しています。
それぞれ、美容室の経営にどのように関わってくる数字なのか、詳しく解説していきましょう。
年収(利益、所得)が800万円を超えたタイミング
年間の所得が800万円を超えるタイミングというのは、所得税から法人税に切り替えることで節税効果が期待できるようになる数字です。
前述したとおり、個人事業主の所得税は累進課税で最大税率45%、法人化の場合の法人税は最大税率23.4%です。
さらに所得分散なども考えると、年間所得800万円あたりから法人化によって納める税金が減らせるようになってきます。
年間の売上が1,000万円を超えたタイミング
次に年間所得1,000万円というのは、消費税に関わる数字です。
売上が1,000万円以下の事業者は免税事業者になることで消費税の納税を免除されますが、売上が1,000万円を超えた2年後からは課税事業者として消費税を納税することが義務付けられています。
この2年後という部分が、実は法人化することでリセットされます。
つまり、売上が1,000万円を超えた翌年に法人化すれば、課税事業者になるのはそこから2年後で良いということです。
ただし、インボイス制度によって売上1,000万円以下でも課税事業者になるという選択をしている場合は、このメリットは受けられません。
とはいえ美容室はBtoCが基本となることから免税事業者のままでいるという選択肢を選びやすい業態なので、売上1,000万円超えが法人化を考えるタイミングとなる事業者は多いでしょう。
事業拡大(多店舗展開)を考えているタイミング
事業拡大(多店舗展開)を考えている場合も、融資や採用といった観点から法人化を検討するべきタイミングであると言えますね。
法人であれば信用度も増すので、金銭面だけでなく、店舗を構える物件についてもより良いところが見つかるかもしれません。
あとは、法人になることで個人の責任範疇が有限になるのも大きな要因です。
要は、法人でつくった借金は基本的に個人で背負わなくてよいということですね。(個人名義で保証人になっている場合などは除く)
これもリスクをとって挑戦をするうえでは大きなメリットなるので、事業拡大を考えている場合は、同時に法人化について検討してみるべきでしょう。
法人化の相談は専門家に
美容室を法人化するかどうかで悩んでいるなら、専門家への相談をおすすめします。
経営状況や今後の経営計画によって、法人化するべきかどうかは大きく異なってくるからです。
法人化はするときもそうですが、畳むときにも手間がかかるものなので、節税効果だけに目を向けてデメリットを把握しきれていないまま法人化すると、あとから後悔することになります。
私たち池上会計は、お客様の利益を第一に考えることをモットーにしている会計事務所です。
お客様の状況をしっかりと確認して、法人化するべきタイミングのお客様には最適な施策を積極的にご提案させていただき、法人化するべきでないタイミングのお客様にはそのことをハッキリとお伝えさせていただきます。
自分たちの利益のために安易に法人化を勧めることはないのでご安心ください。
今なら法人化に関するお問い合わせは初回無料とさせていただいており、法人化をまるっとお任せいただけるプランもご用意しているので、法人化をお考えであればぜひ1度ご連絡ください。
【まとめ】美容室も1度は法人化を検討してみるべき
今回は美容室の法人化について解説をさせていただきました。
美容室については、個人事業主として開業してそのまま営業を続けていくというところも多いです。
しかし今回の記事で解説させていただいたように、然るべきタイミングが来れば1度法人化を検討してみることをおすすめします。
ただし、メリットだけでなくデメリットまでしっかり把握したうえで、よく精査して決めなければいけません。
この辺りは難しい部分なので、極力専門家への相談をおすすめします。
もちろん、私たち池上会計にご相談いただいても大丈夫です。
現在、法人化に関するお問い合わせは初回無料とさせていただいているので、ぜひ気軽にご相談ください。