今回は、法人決算を税理士なしでやることについて解説していきます。
法人決算とは、年間の損益をまとめて決算書を作成する手続きです。
この決算書は税務署などへの申告のときにも使用する重要なものであるため、正しく作成しなければいけません。
ただ個人事業主の場合だと、帳簿を自分で付けて、自分で確定申告をするという人も多いです。
そのため個人事業主から法人化するさいに、「法人決算は自分でできるのではないか?」と考える人もいます。
そこで今回は法人決算について、以下の内容を解説していきます。
- 法人決算を税理士なしでできるのか?
- 法人決算を税理士なしでやるメリット・デメリットは?
- 法人決算を税理士なしでやる方法
- 法人決算を税理士に依頼する際の費用相場
法人決算を税理士なしでやりたいと考えている場合は、ぜひ参考にしてみてください。
法人決算は税理士なしでできる?
結論からいうと、法人決算を税理士なしでやること自体は可能です。
ただし個人事業主の確定申告と比べるとかなり複雑で難易度が高いため、同じような感覚でできるというわけではありません。
法人決算を行うには、簿記や会計、税務に関する専門的な知識が必要です。
そのため法人決算については、仕組み上は誰でもできますが、難易度でいうと誰でもできるわけではない、というのが正しい認識ですね。
確定申告と法人決算の違い
確定申告は主に個人事業主が1月1日~12月31日の期間で収入、支出、控除などから所得を計算し、税務署に提出することで納税額を確定する手続きのことです。
一方、法人決算は法人が当該期間の損益計算をし、当該期末の資産、負債、資本の金額を計算して財政状況を明らかにする会計上の手続きのことをいいます。
もちろん、明らかになった財政状況を税務署に提出して法人税額を確定する手続きも必要です。
決算をするのは個人事業主であろうと法人であろうと変わりませんし、それを税務署に報告して税額を確定させる手続きが必要なのも変わりません。
ただ、個人事業主と比べて法人の方が損金として参入できる項目が多かったり、個人事業主に比べて法人の方が用意しなければいけない資料が多かったり、法人の場合は期首(期末)を自由に設定できたり、といった違いはあります。
また前述したとおり、決算の難易度や手間が個人と法人で大きく違ってくるので、今まで個人事業主として自分で確定申告をしていた人でも、自分で法人決算をやるのはかなり難しいのが実際のところです。
法人決算を自分でやるには
法人決算を自分でやるためには、最低限以下の3点が必要となります。
- 日頃からの帳簿付け
- 知識の取得
- 会計ソフトの利用
日頃から帳簿付けを怠らないことはもちろんですが、それ以外にも税務に関する知識を取得し、会計ソフトを使いこなせるようにならないと自分で法人決算を行うことはできません。
詳しい手順については後述しますが、難易度は相当高いと思っておきましょう。
法人決算を税理士なしでやるメリット
法人決算を税理士なしでやるメリットは以下のとおりです。
- 税理士への報酬が発生しない
- 経費を自己判断で計上できる
まず自分で法人決算をやる場合、当然ながらそれを依頼する分の報酬(経費)は発生しません。
また、どこまでを経費として計上するか、を自己判断で決めることができます。
税理士に法人決算を依頼する場合、経費にできるかどうかは税理士の判断になるため、自分で経費を判断した方が節税に繋がる可能性があるわけですね。
ただし、これらのコストカット・節税効果は限定的です。
後述しますが、自己判断で経費を決めるのは脱税に繋がるリスクをはらんでいるため、プラス面とマイナス面を差し引きすればそう大きなメリットであるとは言えないでしょう。
法人決算を税理士なしでやるデメリット
法人決算を税理士なしでやる場合、以下のようなデメリットがあります。
- 税務に相当な工数がかかる
- 知識不足によって余分な税金をとられる可能性がある
- 意図せず脱税をしてしまう可能性がある
- 税務調査の対応で税理士を頼れない
- 融資を受けづらくなる
メリットに比べると、これらのデメリットは非常に大きなものです。
1つずつ詳細を解説していきます。
デメリット1.「税務に相当な工数がかかる」
法人決算を自分(自社)でやろうとした場合、税務にかなりの工数がかかってしまいます。
自分でやる場合は本業が疎かになってしまいますし、従業員にやってもらう場合でもその分のコストは大きいです。
それこそ税理士に法人決算を依頼して、その分の時間を本業に費やしたり人件費を削減したりする方が、結局コストパフォーマンスが良くなる可能性が大いにあります。
デメリット2.「知識不足によって余分な税金をとられる可能性がある」
法人決算を自分でやる場合、税務の知識や経験が浅いことから、本来できるはずの節税ができず、余分な税金を納めることになる可能性があります。
それこそ、税理士に支払う顧問料より余分な税金の方が高額になるケースも多いです。
よほど税務の知識に自信があるという場合は別ですが、そうでなければ税務については1度税理士に相談してみることをおすすめします。
デメリット3.「意図せず脱税をしてしまう可能性がある」
自分で法人決算をやるとなるとどこまで経費にして良いかわからず、結果的に脱税になってしまうようなものまで経費に計上してしまう危険性もあります。
個人事業主に比べて法人は経費にできる幅が広がりますが、その解釈を間違えてしまうケースはかなり多いです。
それが悪意なしとみなされればまだ修正申告をするだけで済みますが、悪意があると判断されてしまうと脱税扱いとなり、重いペナルティを課されることになります。
デメリット4.「税務調査の対応で税理士を頼れない」
税理士なしで法人決算をした場合、税務調査の対応はかなり難しいです。
税理士と顧問契約を結んでいれば、税務署からの質問には知識を持った税理士が対応をしてくれます。
一方、税理士と顧問契約を結んでいない場合は自分で回答をしなければいけません。
さらに言えば、税理士に頼らず申告を行っていることで税務調査官に「正しい計算ができていないかもしれない」と疑われ、税務調査に繋がる可能性も上がってしまいます。
こういった税務調査のリスクに備えるためにも、法人決算は税理士に頼った方が無難です。
デメリット5.「融資を受けづらくなる」
法人決算を税理士なしで行うと、融資を受けづらくなってしまう可能性があります。
なぜなら、税理士を介さずに作成した決算書では信頼性を確保することが難しいからです。
金融機関の立場からしてみれば、資格を有した税理士が携わって作成した決算書と素人だけで作成した決算書で信頼性に大きな差が生じることは当然だと言えます。
そのため税理士なしで法人決算をやっている場合は、本当に必要なときに融資を断られてしまうリスクがあるわけですね。
法人決算を税理士なしでやる方法
法人決算を自分でやる手順は以下のとおりです。
- 記帳
- 帳票の整理
- 試算表の作成
- 決算整理仕訳
- 法人税申告書の作成
- 決算書類の作成
- 取締役会、株主総会での承認
- 税務署への申告
- 書類の保存
まず、日々の取引をしっかりと記帳し、領収書や請求書などの帳票を整理しておいてください。
そのうえで期末になったら、資産・負債の実査を行い、試算表を作成します。
試算表は会社の収入・支出・資産・負債などを整理した表のことです。
次に各勘定科目の残高を決算日時点の正しい金額に調整する決算整理仕訳を行います。
そしてその情報をもとに税金の計算をして申告書や決算書類を作成してください。
ちなみに法人決算に必要となる書類は以下の通りです。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 総勘定元帳
- 法人税申告書
- 法人事情概況説明書
- 消費税申告書
- 地方税申告書
- 勘定科目明細書
場合によってはほかにも書類が必要となるケースがありますが、最低限これらの書類は作成が必要です。
各書類が作成できたら取締役会・株主総会での承認を得て、税務署に提出します。
これによって税金額が確定するので、納税して完了です。
作成した重要書類については、法定保存期間(法人は7年~10年)に基づいてしっかりと保存しておいてください。
以上が法人決算から納税の流れです。
ただし、実際にやると言葉で解説している以上の手間や時間がかかるうえに難しいことを実感するかと思います。
法人決算を税理士に依頼する際の費用相場
法人決算を税理士に依頼する場合、費用相場は単発で15万円~25万円程度、顧問契約をしている場合は顧問料に追加で顧問料4ヵ月~6ヵ月分程度です。
たとえば顧問契約をしている場合の月額顧問料が3万円であれば、別途12万円~18万円程度が相場となる計算ですね。
ただし会社の規模や売上高、従業員数などによって費用は変動するので、正確に価格を知りたい場合は個別に税理士に相談する必要があります。
とはいえ税理士に依頼することで削減できる工数や節税効果と比べれば、ほとんどのケースで問題とならない金額となるはずです。
法人決算は税理士に依頼する方が良い
ここまでお話ししてきたとおり、コストパフォーマンスやリスクヘッジの面で考えて、法人決算は税理士に依頼する方が良いケースがほとんどです。
法人決算を税理士に依頼することで適正に節税をすることができますし、決算書の信頼性が上がることから融資も受けやすくなります。
また申告の間違いや税務調査といったリスクについても、税理士に依頼することで備えることが可能です。
そのため法人決算を税理士なしでやろうと考えている場合でも、1度は税理士に相談してみることをおすすめします。
私たち池上会計なら初回のご相談は無料です。
お客様にとってもっとも得となるご提案をさせていただきますので、ぜひ気軽にご相談ください。
【まとめ】法人決算は税理士なしでも可能だがおすすめはしない
今回は「法人決算を税理士なしでやるのはどうなのか?」というお話をしてきました。
結論からいうと、法人決算は税理士なしでも法律上可能です。
ただし、手間やコスト、リスクの面から考えて、法人決算を税理士なしでやることはおすすめできません。
ほとんどの場合、法人決算を自分でやるコストより税理士への依頼料の方が安くつくからです。
むしろプロの目線で決算をしてもらうことで、依頼料を大きく超える額の節税ができる可能性まであります。
さらに税務調査や決算書の信頼性が下がるといったリスクのことを考えると、法人決算は自分でやらず、税理士に依頼する方が無難であると言えるでしょう。
ちなみに法人決算については、ぜひ私たち池上会計にご相談ください。
池上会計はお客様の利益を第一に考えている会計事務所です。
お客様の状況をしっかりとヒアリングし、最適なご提案を積極的にさせていただきます。
今なら初回のご相談は無料となっているので、この機会にぜひ気軽にご相談ください。
またこれから法人化をするという場合は、面倒な法人設立の手続きをすべてまるっとお任せいただけるプランのご用意もありますので、そちらも併せてご確認いただければ幸いです。