今回の記事では、「クリニックを独立開業するときに医師会に加入しないのはあり?」という疑問にお答えしていきます。
開業医になるタイミングで「医師会に入る必要があるのか?」と悩む人は多いです。
あとはそもそも、開業医なら医師会に入ることが必須だと思っている方もいますね。
結論からいうと医師会への加入は必須ではありませんが、診療科目やクリニックの方針によっては医師会に加入しておいた方が良いケースもあります。
そこで今回は、「そもそも医師会ってなんなの?」、「医師会に加入するメリット・デメリットは?」という疑問にお答えしていきます。
医師会への加入を迷っているなら、ぜひ参考にしてください。
日本医師会とは
日本医師会とは、日本の医師による公益社団法人です。
本部は東京都文京区にあり、「医道の高揚、医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り、社会福祉を増進すること」を目的に活動しています。
具体的な役割でいうと、「医師同士の親睦、連携を深め、情報共有を可能にする」、「行政からの指導を医師に周知させる」といった役割を担っています。
ちなみに冒頭でもお話ししましたが、医師会はあくまでも任意加入団体です。
開業医だからといって加入を強制されるものではないので、その点はおさえておきましょう。
医師会に入っていない医師の割合は?
日本の医師の医師会加入率は50%強です。
医師によっては医師会への加入は義務であると勘違いしている方もいますが、実際は半分程度しか加入していません。
ちなみに加入している勤務医と開業医の割合はほぼ半々です。
医師会は開業医だから絶対に入らないといけないというわけではなく、逆に勤務医だからといって必ずしも加入する必要がないわけでもありません。
医師会に加入するメリット・デメリット
医師会への加入にはメリットもデメリットもあります。
前述したとおり医師会への加入は強制ではないので、このメリットとデメリットをもとに加入するかしないかの判断をしてください。
それでは医師会加入のメリット・デメリットについて、詳しく解説していきます。
医師会に加入するメリット
開業医が医師会に加入するメリットとしては以下のようなものがあります。
- 検診・予防接種の受託が可能になる
- 医療業界の情報を入手しやすくなる
- 地域の医師と交流するきっかけになる
- 医師賠償責任保険に加入できる
- 医師年金制度に加入できる
それぞれどのようなメリットなのか見ていきましょう。
医師会加入のメリット1.「検診・予防接種の受託が可能になる」
医師会に加入すると行政から受託した検診や予防接種の業務を振り分けてもらえます。
これ自体が売上に加算されるのはもちろん、検診や予防接種をきっかけに自分のクリニックに通ってもらえるようになる可能性もあるので、メリットは大きいです。
とくに集患に不安がある場合は、認知拡大の意味も込めて医師会に加入しても良いかもしれません。
医師会加入のメリット2.「医療業界の情報を入手しやすくなる」
医師会には、日本の医師の約半分が所属しています。
そのため、医師会経由でさまざまな情報を入手しやすいです。
もちろん、厚生労働省や保健所からの通知や情報も医師会に集まってくるので、情報収集という意味でも医師会に所属するメリットは非常に大きいでしょう。
医師会加入のメリット3.「地域の医師と交流するきっかけになる」
医師会には多くの医師が所属しているので、医師会に加入することで医師同士の交流をはかることができます。
とくに開業医の場合はほかの医師とかかわる機会が少ないので、良いきっかけになります。
色々と情報交換ができるのはもちろん、近くに医師仲間ができるとそれだけで心強いですね。
医師会加入のメリット4.「医師賠償責任保険に加入できる」
医師会に加入すれば、「日本医師会医師賠償責任保険制度」にも加入できるようになります。
医療行為によって生じた身体の障害につき損害賠償を請求され、その請求額が100万円を超える場合に保険金を受け取れる制度です。
万が一のときの備えになるので、医師会に加入するならこちらも加入しておきましょう。
(参考:日本医師会)
医師会加入のメリット5.「医師年金制度に加入できる」
医師会に加入すれば、「医師年金制度」にも加入できるようになります。
基本年金保険料(月額12,000円)、加算年金保険料の2種類の保険料を納めることができ、医師を引退したときに年金を追加で受けられるようになります。
とくに医療法人化していない開業医は個人事業主となるので、老後の備えを増やせるのはありがたい制度だと言えますね。
医師会に加入するデメリット
ここまでメリットを説明してきましたが、逆に医師会に加入するデメリットについては以下のようなものが挙げられます。
- 入会費・年会費がかかる
- 業務負担が増える可能性がある
- 煩わしい人間関係が増える
医師会に加入するかどうかは、結局のところメリットとデメリットのバランスによって決めるべきです。
デメリットについても1つずつ解説していくので、この機会に把握しておきましょう。
医師会加入のデメリット1.「入会費・年会費がかかる」
医師会に加入するためには、入会費と年会費を支払わなければいけません。
ちなみに日本医師会の年会費は以下のとおりです。
画像引用:日本医師会HP
日本医師会には入会費はありません。
しかし地域の医師会についてさらに年会費と入会費がかかってくるので、とくに開業医の負担はかなり大きくなります。
下記は、「大阪市北区医師会」が出している年会費の図です。
画像引用:大阪市北区医師会
このように日本医師会の会費のほかに、大阪府医師会、北区医師会の会費が加算されてくるので、やはり負担は大きいですね。
入会費・年会費は地域によっても変わってくるので、自分の地域の会費を調べたうえでメリットと見比べてみましょう。
医師会加入のデメリット2.「業務負担が増える可能性がある」
医師会に加入することで業務負担が増える可能性があります。
なぜかというと、講演会の運営手伝いや学校医への対応といった役割を担うよう求められることがあるからです。
そのため「日頃から忙しい」、「プライベートはしっかり確保したい」という場合は、医師会への加入は少し考えた方が良いかもしれません。
医師会加入のデメリット3.「煩わしい人間関係が増える」
人によっては、医師会に加入することで煩わしい人間関係が増えると感じる方もいます。
メリットとして「地域の医師と交流するきっかけになる」というものを挙げさせていただきましたが、これが人によってはデメリットに感じる場合もあるということですね。
さらに地域によっては少し面倒なローカルルールがあって、上下関係に厳しい医師会もあります。
そういった煩わしさが絶対に嫌だという場合は、医師会への加入は見送った方が良いでしょう。
医師会に入らないとどうなる?
気になるのは「医師会に入らないとどうなる?」という部分だと思いますが、基本的には先に挙げさせていただいたメリットが受けられないだけだと考えて良いです。
医師会に入らないからといってどこかから攻撃されるということもありません。
実際、日本の半分近くの医者は医師会に入っていないので、あくまでも自分の判断で加入するかしないかを決めれば良いでしょう。
結局、医師会には加入するべき?
医師会に加入するべきかどうかというのは、一概には言えません。
なぜなら各医師(各クリニック)によって入るべき人もいれば、入らない方が良い人もいるからです。
このあたりも結局のところ、医師本人がメリットとデメリットをどう受け止めるかによります。
ただ強いて挙げれば、内科、小児科のクリニックは医師会に加入するメリットが大きいと言われています。
理由は、行政受託の検診や予防接種の恩恵を受けやすいからです。
そのため、あなたのクリニックの診療科目が内科か小児科であれば、医師会への加入を前向きに考えても良いかもしれません。
そういった点も踏まえ、最終的にはメリットとデメリットを見比べて決めましょう。
【まとめ】医師会に加入せずに開業することは可能!
今回は、開業医は医師会に加入するべきか否か、ということについて解説をしてきました。
医師会への加入にはたくさんのメリットがありますが、同時にデメリットも存在しています。
そのため医師会に加入するべきかどうかは一概には言えません。
あくまでも医師本人がメリットとデメリットをどう受け止めるかが重要になってきます。
ただ前提として勘違いしないでほしいのですが、医師会への加入は強制ではありません。
自分の意思で決められるものなので、その点は理解したうえで、自分のクリニックに合った選択をしましょう。
ちなみに私たち池上会計は、医療関係に強い会計事務所です。
とくに開業独立、医療法人化に関しては力を入れています。
ただ税務や会計をこなすだけなく、クリニック運営が上手くいくように積極的に関わらせていただきますので、もし税務や経営に関して悩みや疑問などがあれば、ぜひ以下の媒体から1度ご連絡ください。
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