今回は医師が独立開業や医療法人化するときに知っておかなければいけない「医療機器の耐用年数」について解説していきます。
独立してクリニックを運営するときに気になってくるのが医療機器にかかる経費です。
診療科によっても変わってきますが、かなり大きな額になるので、どのように計上すれば良いのか、またいつまでこの医療機器を使えるのか、というところで悩む医師も多くいます。
また「耐用年数」だけでなく「耐用期間」や「耐用寿命」など似ている言葉もあるので、実は結構ややこしいです。
そこで今回は医療機器の耐用年数や似た言葉について、一覧で解説をしていきます。
これから独立開業、医療法人化をする、もしくは検討している、という場合は、ぜひ参考にしてください。
耐用年数とは
耐用年数とは、国が定めた、減価償却資産が使用に耐える年数のことです。
減価償却資産は使用年月によってどんどんと価値を落としていき、耐用年数に到達すると資産価値が0円になります。
この耐用年数のあいだに毎年一定額ずつ経費として処理していくのが減価償却です。
たとえば耐用年数が5年で100万円する医療機器があった場合、1年間に20万円分ずつ減価償却をしていき、5年後にその医療機器の資産価値が0円になるといったイメージですね。
耐用年数はあくまでも税法上の考え方に基づくものであり、耐用年数を過ぎた医療機器が直ちに使えなくなるということではありません。
国税庁が定める耐用年数一覧
医療機器について、国税庁のHPで以下のように耐用年数が定められています。
国税庁HP
ただ前述したとおり、こちらはあくまでも税法上で定められている考え方です。
この期間を過ぎたら直ちに使えなくなるというわけではありませんし、逆にこの期間までは絶対に壊れないというわけでもありません。
耐用年数と似ている言葉
耐用年数と似ている言葉に、以下のようなものがあります。
- 耐用期間
- 耐用寿命
- 使用期限
- 保証期間
医療機器を取り扱ううえでは、それぞれの意味をきちんと理解しておかなければいけません。
1つずつ解説していきましょう。
耐用期間
医療機器の耐用期間とは、標準的な使用状況と保守状況で消耗品の交換・修理・オーバーホールを繰り返した条件下において、機器の安全性や信頼性を維持できなくなると予想される期間のことです。
耐用期間は各メーカーの自己基準で決定されるため、期間を決める統一の基準はありません。
耐用期間を超えたからといって必ずしも使えなくなるわけではありませんが、耐用期間を超えた医療機器の使用は故障や医療事故のリスクを高めるため、できるだけ早い更新をおすすめします。
耐用寿命
耐用寿命は、「物理的、経済的、医療技術的、企業戦略的な種々の条件によって、結果として当該機器が使用できなくなる期間」と定められています。
耐用期間はメーカー側がさまざまなデータや根拠に基づいて設定する期間ですが、耐用寿命は結果に基づいた期間であると言えるでしょう。
参考:第 34 回日本医療福祉設備学会(2005)予稿集 パネルディスカッションⅢ-1
使用期限
使用期限とは、未開封かつ適切に保管されている医薬品の品質が保持される期限のことです。
イメージとしては食品の消費期限に近いものですが、医薬品であることから、より厳正に管理しなければいけません。
保証期間
保障期間とは、医療機器に不具合が生じ、かつ使用者側に過失がない場合に、メーカー責任の可能性があるとして無償修理などの保障に応じてもらえる期間のことです。
たとえ耐用期間中であっても保証期間が過ぎている場合は使用者側負担の修理となるため、混同しないように注意してください。
医療機器の中古購入はあり?
医療機器の導入が金銭的に厳しい場合、中古の医療機器を購入するというのも1つの手です。
医療機器が中古として出回る理由としては、主に以下の2つが挙げられます。
- 型落ちの製品
- 一部の不良が出た製品
中古のメリットは、なんといっても金銭的負担が軽減されることです。
とくにクリニックの開業資金でかなりの負担がかかっている状態であれば、かなり助かるのではないでしょうか。
ただ、中古には「保障が新品に比べて物足りない」、「新品に比べて動作に不安がある(メンテナンスが完璧かどうかわからない)」、「残された耐用寿命が短い」といったデメリットもあります。
もちろん、中古の医療機器を販売している業者がしっかりと点検はしているでしょうが、中古である以上、完璧とまでは言えません。
また型落ちである場合は、最新機器と比べて当然性能が低いです。
それでも診察に支障が出ないかどうかは、医師として判断する必要があります。
とはいえやはり安さは魅力なので、そこまで動作に不安がない医療機器や型落ちでも性能差があまりない医療機器であれば、中古を検討しても良いのではないでしょうか。
医療機器のリースも1つの手段
医療機器を入手する手段として、リース、つまり毎月レンタル料を支払って医療機器を借り受ける方法もあります。
リースであれば手元の開業資金を温存し、別の投資や運転資金に回すことも可能です。
不具合が生じたときも保険に加入すれば追加費用は発生しません。
さらにリース代金は全額経費として処理でき、固定資産税もかからないため、税務上のメリットもあります。
ただ一方でリースの場合、原則中途解約ができないのがネックです。
また、税務上では特別償却を受けられないというデメリットがあります。
特別償却は医師に与えられた税法上の特典で、減価償却で通常より多くの金額を経費にできるといったものです。
このように医療機器のリースにはメリットもデメリットもあるため、経営状況などによってどちらを選択するべきかは変わってきます。
細かい数字になってくるので、迷ったときには税理士に相談するのがおすすめです。
ちなみに、私たち池上会計は医療関連に強い税理士・会計事務所です。
初回相談は無料とさせていただいているので、ぜひご利用ください。
【まとめ】医療機器の耐用年数を正しく理解しよう
今回は医療機器の耐用年数や似た言葉について詳しく解説してきました。
耐用年数、耐用期間、耐用寿命など、色々と似た言葉があってややこしいのですが、意味としては大きく変わってくるため、しっかりと把握しておきましょう。
医療機器はクリニックを開業するときや医療法人化をするときに何かとネックになる部分です。
適当に考えていると知らないうちに大きく損をしてしまうこともあり得るので、基本的には税理士などの専門家に相談することをおすすめします。