今回はIT導入補助金について、「開業したばかりでも申請できるのか?」、「採択されるポイントは?」について解説していきます。
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者にとって比較的活用しやすい補助金です。
とくに開業したばかりのときはITツールの導入にかかる費用が大きな負担になります。
そのため、できるなら開業するタイミングでIT導入補助金を活用したいと考えている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回はIT導入補助金について、申請対象となる要件や申請方法、採択されるポイントを詳しく解説していきましょう。
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者などを対象として、業務効率化やDXに向けたITツール導入を支援する補助金制度です。
補助金の対象となる要件には以下のようなものがあります。
- 中小企業・小規模事業者であること
- ITツールやサービスの導入が事業の生産性向上や発展に繋がると認められるもの
- 事業に継続性や将来性があるもの
- 過去に不正や虚偽の申告をしていないこと
具体的な要件については各年度毎にHPで公表されるので、そちらを確認するようにしてください。
たとえばこの記事を執筆している2024年6月時点では、以下のような条件が公表されています。
IT補助金2024
また補助対象となる事業内容についても毎年変わってくるので、申請する毎に公式HPで確認するようにしてください。
ちなみに記事執筆時点(2024年6月)では、以下のような枠が用意されています。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
※参考:IT補助金2024
枠によって補助対象が変わるだけでなく、補助率や補助額の上限も変わってくるため、自社があてまはまるものの中でもっとも条件が良いものを選んで申請すると良いでしょう。
IT導入補助金は開業したばかりでも申請できる?
今後要件が変わる可能性はありますが、基本的にIT導入補助金は開業したばかり、法人化したばかりでも申請可能です。
ただし、事業の継続性や将来性という面でどうしても過去の実績やデータが不足しているということから、採択を受ける面では不利になってしまいます。
そのため開業したばかりである場合は、より事業計画やビジョン、ITを導入することの効果性を詳細に示す必要があると言えるでしょう。
IT導入補助金の申請方法(手順)
IT補助金を申請する手順は以下のとおりです。
- 公募要領などを確認する
- IT導入支援事業者の選定、ITツール(サービス)の選択
- 申請資格を満たすための条件を確認、実行する
- 交付申請を行う
- ITツール(サービス)の発注・契約・支払い
- 事業実績報告
- 補助金交付手続きと事業実施効果報告
1つずつ、手順の詳細を解説します。
手順1.「公募要領などを確認する」
まずは公式HPで公募要領などを確認しましょう。
初めての申請であれば当然制度を理解することが必要ですし、2回目以降のチャレンジであっても毎年用意される枠や要件の変更などがあるので、きちんとチェックしておいてください。
参考:IT導入補助金2024
手順2.「IT導入支援事業者の選定、ITツール(サービス)の選択」
次にIT導入支援事業者の選定、導入するITツール(サービス)の選択を行ってください。
どちらも事務局から採択を受けた事業者やツールを選択する必要があります。
IT導入支援事業者は、ITツール(サービス)をサポートする共同事業者です。
ITツールの選定や申請などは、このIT導入支援事業者と二人三脚で行っていくことになります。
また、ITツールについても適当に決めるのではなく、自社の課題を洗い出したうえで生産性向上に繋がるものを選択しましょう。
ちなみにIT導入補助金2024だとこちらのページで事務局から採択を受けているIT導入支援事業者・ITツールの検索ができるので、こちらで探してみてください。
ただし、この段階で先にITツールの契約や支払いをしてしまうと補助金の対象外となってしまうため、あくまでも選定するまでに留めておきましょう。
手順3.「申請資格を満たすための条件を確認、実行する」
申請資格を満たすための条件を確認して、必要であれば実行しておきましょう。
たとえばIT導入補助金2024の場合、以下を実行しておく必要があります。
- 「gBizIDプライム」アカウントの取得
- 「SECURITY ACTION」宣言の実施
- 「みらデジ経営チェック」の実施 ※通常枠の場合は必須
申請直前にやろうとすると間に合わなくなる可能性があるので、事前に余裕を持ってチェックしておいてください。
手順4.「交付申請を行う」
ここまでの事前準備が整ったら、実際に交付申請を行っていきます。
申請は、IT導入支援事業者から招待を受けることでログインできるようになる「申請マイページ」から進めてください。
ここでの情報入力が採択されるかどうかに大きな影響を与えるので、事業計画やITツールの必要性など、具体的にわかりやすく記入するようにしましょう。
また、申請するさいに以下の資料が必要になるので、併せて準備しておいてください。
〇法人の場合
- 履歴事項全部証明書写し(発行から3か月以内のもの)
- 税務署の発行する法人税の直近の納税証明書(その 1 またはその 2)
〇個人事業主の場合
- 運転免許証(有効期限内のもの)、もしくは運転経歴証明書、もしくは住民票の写し(発行から3か月以内のもの)
- 税務署の発行する所得税の直近の納税証明書(その1もしくはその2)
- 前年分の確定申告書 B の控え
※必要書類も年度によって変更になる可能性があるので、公募要領をしっかりと確認しておいてください
手順5.「ITツール(サービス)の発注・契約・支払い」
交付申請を行い、無事採択、交付決定を受けたら、実際に申請していたITツール(サービス)を導入してください。
ITツールの導入は交付決定を受けてから、遅くても半年以内には実施するようにしましょう。
繰り返しになりますが、交付決定前に契約・支払いを行ってしまうと補助対象外になるので注意です。
手順6.「事業実績報告」
申請マイページから、実際にITツールを導入したことがわかる証憑書類を提出してください。
書類については、IT導入支援事業者に確認しつつ作成することをおすすめします。
手順7.「補助金交付手続きと事業実施効果報告」
事業実績報告を完了することで補助金額が確定されるため、申請マイページから確認して交付手続きを行ってください。
補助金の交付を受けたあとは、事業実施効果報告の提出が必要です。
事業実施効果報告は、ITツールの導入による効果を申請時の計画と3年間比較しなければいけません。
こちらも申請マイページから入力できるので、忘れずチェックしておきましょう。
IT導入補助金が採択されるためのポイント
IT導入補助金で採択されるためには以下のポイントを押さえておいてください。
- 募集ページにある情報をしっかり把握する
- 具体的な事業計画を示す
- IT導入の必要性を明確に説明する
- 加点項目を把握して取り組む
詳細を解説していきます。
ポイント1.「公募ページにある情報をしっかり把握する」
まずは公募ページをしっかりと読み込み、情報を把握しましょう。
とくに補助対象や申請のルールをしっかりと把握しておかなければ、採択されるものもされません。
また公募ページには実際に採択を受けた事業者の補助金活用事例などもあるので、参考にすることもできます。
IT導入補助金の申請をするなら、まずは公表されている情報を読み込むことから始めましょう。
ポイント2.「具体的な事業計画を示す」
申請書を作成するさいに事業計画を具体的に示すことで、IT導入補助金が採択される可能性は上がります。
とくに開業したばかりの場合は過去のデータや実績が少ないため、より具体的な事業計画が求められるでしょう。
また、事業の強みや弱みについても具体的に記載しておくと、採択率が上がります。
ポイント3.「IT導入の必要性を明確に説明する」
申請書を作成するさいに、そのITツール(サービス)を導入することで生産性が向上するということを明確に記載してください。
「なぜ申請しているITツールやサービスを導入する必要があるのか?」、「導入することでどのような結果になるのか」、「どのような背景があるのか」といった部分ですね。
ここがわかりやすく、かつ具体的に説明できていると、採択される可能性が上がります。
ポイント4.「加点項目を把握して取り組む」
IT導入補助金には加点項目があるので、可能なものは取り組むようにしましょう。
ちなみにIT導入補助金2024の場合は、以下のような加点項目が設けられています。
IT導入補助金2024 加点項目一覧
これらを押さえておくことで採択率を上げられるので、取り組みやすいものから取り組んでみてください。
IT導入補助金を申請するさいの注意点
IT導入補助金を申請するさいは、以下の点について注意してください。
- 交付決定前の契約・支払いは対象外
- 交付決定から実際に補助金が出るまでにタイムラグがある
- 申請には手間と時間がかかる
まず繰り返しになりますが、交付決定前の契約・支払いについては補助対象外となるので注意してください。
申請前はもちろん、採択されたあとでも、交付決定までにITツールの契約・支払いをしてしまうと補助金がもらえなくなってしまいます。
また交付決定してから実際に補助金がもらえるまでに時間がかかる点にも注意が必要です。
実際に補助金が下りるのは、ITツールの契約・支払いをして事業実施報告をしたあとになります。
つまり、先にITツールの支払いを事業者側で立て替えないといけないということです。
そのため、資金繰りには十分に注意しなければいけません。
あとは、申請には手間と時間がかかるものだと思っておいてください。
とくにギリギリになって申請しようとしても、色々と間に合わなくなってしまったり、ボロが出て採択が出なくなってしまったりします。
IT導入補助金を申請する場合は、余裕を持ったスケジュールで計画的に行いましょう。
【まとめ】IT導入補助金は開業したばかりでも申請できる!
今回はIT導入補助金について解説をさせていただきました。
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者を対象とした補助制度で、開業したばかり、法人化したばかりであっても申請することは可能です。
ただ開業したばかりの場合は実績不足によって、どうしても採択を受けるうえで不利になってしまいます。
その分、申請書を作成するさいに事業計画やITツール(サービス)の必要性を具体的に説明するように心がけてください。
IT導入補助金は開業したばかりの事業においてかなり有用なものです。
しっかり対策したうえで、余裕を持ったスケジュールで交付決定を目指しましょう。
ちなみに池上会計では、お客様に対して節税はもちろん、補助金などの資金調達についても積極的にご提案をさせていただいています。
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