今回は、経営者なら絶対に知っておくべき「財務分析」について解説していきます。
営業やマーケティングは得意だけど、経理・財務のことは全然わからない……という社長が実は多いです。
しかし、2,000社以上の財務にかかわってきた税理士の視点でいえば、経営者にこそ経理・財務のことを知っておいてほしいと強く思います。
経営者が財務を理解しているからこそ攻めの経営やリスク回避ができ、会社の経営が上手くいくからです。
そこで今回は財務分析について、目的や分析方法(代表的な指標)をお伝えさせていただきます。
ぜひ参考にして、あなたの会社のことをより深く理解してください。
財務分析とは?

財務分析とは、財務諸表を分析して経営状況を把握する手法のことです。
詳しくは後述しますが、財務分析は「収益性分析」、「安全性分析」、「生産性分析」、「効率性分析」、「成長性分析」の5つに分類されます。
この5つの指標を理解し、自社の経営状況を把握したうえで、成長戦略やリスク回避といった経営判断を行うのが経営者のもっとも重要な仕事の1つだと言えるでしょう。
財務分析を行う目的
財務分析を行う目的は「安定した経営」、「事業成長」、「経営危機の回避」のための情報を把握・理解することです。
財務分析をして、その数字を基に経営戦略を考えるからこそ、会社経営は上手くいきます。
よく「財務分析は意味がない」、「そんな面倒なことをしなくても今まで会社は成長してきた」という社長がいますが、それはたまたま調子が良かったからと言わざるを得ません。
むしろ財務分析をきちんとしていれば、もっと大きく成長できていた可能性だってあります。
このまま財務分析をしなければ、今後、市場の変化が起こった時に対応できず、経営破綻に追い込まれる可能性だってあるわけです。
だからこそ財務分析は、健全な会社経営のために欠かせない重要な作業だと言えるでしょう。
外部分析と内部分析
財務分析は、大きく2つの種類に分けられます。
- 外部分析
- 内部分析
外部分析は、公開されている財務諸表の情報に基づいて外部の企業を分析することです。
たとえば「取引先の経営状況を把握しておきたい」、「投資先の経営状況を把握しておきたい」というときに行います。
とくに大きな取引をする際は、「この取引先は問題なく支払いをしてくれるのか?」という観点から外部分析をしておくべきでしょう。
一方、内部分析はその名のとおり、自社の財務諸表に基づいて経営状況を把握するための財務分析です。
自社の状況を把握したり、戦略を立てたりするために非常に重要な分析であると言えます。
この内部分析を怠ってしまうと、自社の状況を把握できず経営破綻に陥ってしまったり、成長戦略を立てられずに会社が停滞してしまったりします。
実数分析と比率分析
財務分析には「実数分析」と「比較分析」という分け方もあります。
「実数分析」とは、財務諸表に乗っている実際の数字を用いて行う分析です。
実際の金額をもとに分析をするため、わかりやすいのがメリットです。
一方、「比較分析」は財務諸表に乗っている数字の比率を求めて分析を行います。
実数分析と比べて少しややこしくなりますが、比率を分析することで効率性や有効性を分析することができます。
財務分析をする際に「これはどっち」ということを気にする必要はありませんが、知識として知っておいても良いでしょう。
財務分析で用いる書類

財務分析をするために用いるのは、主に下記のような書類です。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- キャッシュフロー計算書(C/F)
貸借対照表は、企業が保有する資産、負債、純資産の残高が記載されている書類です。
損益計算書には、1年間の売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外収益・費用、特別利益・損失、当期純利益などが記載されています。
キャッシュフロー計算書は、営業活動、投資活動、財務活動の3つの区分に分けて、それぞれのキャッシュフロー(お金の流れ)が記載されている書類です。
この3つの重要な書類のことを「財務三表」と言います。
財務分析をするには、この財務三表が必要です。
財務分析の代表的な分析のやり方と指標

先にも述べましたが、財務分析をするうえで重要となるのが下記5つの分析です。
- 収益性分析
- 安全性分析
- 生産性分析
- 効率性分析
- 成長性分析
それぞれの分析で使う指標と、分析のやり方を解説していきます。
1.収益性分析
収益性分析は、「企業が利益を生み出す力」を分析する方法です。
下記のような指標をチェックし、判断します。
〇 総資本経常利益率(ROA)
総資本経常利益率 = 経常利益 ÷ 総資本 × 100
総資本経常利益率は、企業が調達した総資本に対してどれだけの経常利益を生み出しているかの指標です。
たとえば総資本1億円で年間1,000万円の経常利益をあげていた場合、総資本経常利益率は10%となります。
〇 売上高総利益率
売上高総利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
売上高総利益率は、販売している商品やサービスの利益率の高さを示す指標です。
粗利益率とも呼ばれます。
〇 経営資本営業利益率
経営資本営業利益率 = 営業利益 ÷ 経営資本 × 100
経営資本営業利益率は、本業の収益性を示す指標です。
この比率が高いほど、本業の収益性が高いと判断できます。
2.安全性分析
安全性分析は、企業の倒産リスクを分析する手法です。
下記のような指標をチェックし、どれくらいのリスクがあるのかを判断します。
自己資本比率
自己資本比率 = 自己資本(純資産) ÷ 総資産 × 100
自己資本比率は、長期的な経営の安定性を示す指標です。
銀行からの借入などを含めた総資産のうち、自己資本(純資産)がどれくらいの割合を占めるかを表します。
自己資本が高いほど返済の心配をする必要がなく、経営の安全度が高いと判断できます。
流動比率
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
流動比率は、短期的な企業の支払い能力を示す指標です。
流動資産(1年以内に現金化が予定される資産)に対する流動負債(1年以内に支払いを要する負債)の割合で計算します。
業種にもよりますが一般的には120%~150%程度が目安とされ、100%を下回っていると短期的な支払い能力に難ありと判断されます。
3.生産性分析
生産性分析は、投入した経営資源に対し、どれくらいの付加価値を生み出しているかを分析する手法です。
たとえば人材(労働力)、設備、資金、情報などの資源がどれくらい効果的に売上に繋がっているかを判断します。
労働生産性
労働生産性 = 付加価値額 ÷ 従業員数
労働生産性は従業員1人あたりどれくらいの付加価値を生み出せているかを示す指標です。
ちなみに付加価値は控除法(総生産高 - 外部購入価額)もしくは積上法(人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+当期純利益)といった計算式で算出します。
この労働生産性が高ければ、投入された労働力が効率的に利用されていると判断できます。
労働分配率
労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値 × 100
労働分配率は、自社商品やサービスの付加価値に対して人件費がどれくらいを占めているか示す指標です。
労働分配率が高い場合、従業員への給与での還元は大きいものの、その分会社の利益を圧迫している可能性があります。
逆に労働分配率が低い場合は、労働に対する給与が低く、労働環境があまり良くないことを表します。
4.効率性分析
効率性分析とは、投下した資本でいかに効率よく売上・利益を生み出しているかを分析する手法です。
効率性が高いほど資産が効率的に売上・利益に結びついていると判断しますが、経営戦略によっては効率性を下げてでも在庫を抱えた方が良い場合もあります。
総資産回転率
総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産
総資産回転率は、企業の総資産が1年に売上高という形で何回転したのかを示す指標です。
この数値が高ければ高いほど、会社の資産が効率よく売上に結びついていると判断できます。
売上債権回転率
売上債権回転率 = 売上高 ÷ 平均売上債権
売上債権回転率は、売上債権が現金化されるまでの期間を示す指標です。
売上債権とは、まだ現金化されていない売掛金や受取手形のことを指します。
売上債権回転率が高ければ高いほど売上発生から現金化までの期間が短く、資金的な効率的が良いと判断できます。
在庫回転率
在庫回転率 = 期間中の総出庫数 ÷ 期間中の平均在庫数 ※在庫数で算出
在庫回転率 = 期間中の出庫金額(売上原価) ÷ 期間中の平均在庫金額(棚卸資産) ※金額で算出
在庫回転率は、一定期間内に商品が入れ替わった回数を示す指標です。
在庫回転率を適正に保つことで、在庫の抱えすぎや在庫不足を防ぐことができます。
5.成長性分析
成長性分析は、企業の成長度合いを分析する手法です。
一定期間(主に1年間)で企業がどのくらい成長したかを示します。
売上高成長率
売上高成長率 = (当期売上高 - 前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100
1年間で増減した売上高を示す指標です。
プラスなら売上高の増加、マイナスなら低下を意味します。
経常利益成長率
経常利益成長率 = (当期経常利益 - 前期経常利益) ÷ 前期経常利益 × 100
1年間で増減した経常利益を示す指標です。
売上高成長率と同様、プラスなら経常利益の増加、マイナスなら低下を意味します。
総資本成長率
総資本成長率 = (当期の総資本の金額 - 前期の総資本の金額) ÷ 前期の総資本の金額 × 100
1年間で増減した総資本を示す指標です。
前2つと同様、プラスなら総資本の増加、マイナスなら低下を意味します。
財務分析は税理士や財務コンサルに依頼するのがおすすめ

ここまで財務分析のやり方(指標)を解説してきましたが、できれば財務分析は税理士や財務コンサルといった専門家に依頼することをおすすめします。
財務分析を行うためには正確に財務諸表を作成し、その数字を正しく理解しなければいけないからです。
社長みずからがやると本業に支障がでますし、財務に詳しい社員を雇うのも簡単なことではありません。
さらに社長だけで財務分析をやって経営判断を下さなければならないとなると、困った時の相談先がありません。
そこで頼りになるのが財務のプロです。
税理士や財務コンサルに依頼すれば、社長は本業に集中できる時間が増えます。
困った時には相談ができますし、むしろ専門家側から色々提案してもらうこともできるわけです。
そういった観点から考えて、財務分析は専門家の手を借りることをおすすめします。
財務分析はツールで十分?
今はツールやAIが発達しているため、「財務分析はツールで十分である」という意見もありますが、個人的にはツールは頼り切るものではなく、あくまでも補助に使うものであると考えています。
確かにツールを上手く使えば、少ない労力で正確な財務諸表をつくり、分析を行うことが可能です。
しかし前述した「相談する」、「提案を受ける」という部分は、やはりツールには務まりません。
財務分析はあくまでも経営判断を下すための手段です。
そしてツールは、あくまでもその手段の補助として使えるものだと考えておくべきでしょう。
財務分析を依頼する際の注意点
財務分析は専門家に依頼することを強くおすすめしますが、その際に注意しなければいけないことがあります。
それは、「依頼する先がどのようなスタンスで関わってくるか」です。
たとえば税理士と一言で言っても、そのスタンスはさまざまです。
「ただ正しい税務を行うことのみに特化した会計事務所」もあれば、私たち池上会計のように「正しい税務はもちろん、税務、経営、資金調達、節税面など積極的にご提案をする会計事務所」もあります。
重要なのは、依頼した専門家があなたの会社の財務にどのようなスタンスで関わってくれるかというところです。
仮に正しい財務諸表をつくるだけであれば、それこそツールでも十分できます。
財務分析を専門家に依頼する際は、その専門家がきちんと責任を持ってあなたの会社に関わってくれるかどうかを見極める必要があるのです。
財務分析は池上会計にお任せください!
あなたの会社の財務分析は、ぜひ池上会計にお任せください。
私たち池上会計はただ数字を管理する税務・経理担当ではなく、あなたの会社の財務責任者の一角として、全力で関わらせていただきます。
社長であるあなたのビジョンをしっかりとヒアリングし、その実現に向けて積極的にご提案させていただくのが私たちのスタンスです。
そのためもしかすると、「あれこれ提案されるのが好きじゃない」という場合は、池上会計はあまり向いていないかもしれません。
ただ、もしあなたが会社の成長を望んでいるのであれば、私たち池上会計は、あなたの会社を大きくするキッカケになれると思っています。
初回相談は無料とさせていただいていますので、財務分析を徹底して会社を成長させたいのであれば、ぜひ1度お話だけでもさせていただければ幸いです。
【まとめ】財務分析は経営者なら必ずおさえておくべき
今回は財務分析について解説をしてきました。
財務分析は経営判断を行うために重要な、経営者なら必ずおさえておくべきものです。
財務分析によって「安定した経営」、「事業成長」、「経営危機の回避」のための情報を把握・理解することができます。
ただ、財務分析は正確に行う必要がありますし、さらに情報に対する判断も簡単なものではありません。
そのためできることなら財務分析は、知識を持った社員を育てるか、専門家に依頼するかをおすすめします。
専門家に依頼する際は、ただ数字を管理するところではなく、あなたの財務に責任を持って関わってくれるところを選ぶようにしてください。
前述したとおり、私たち池上会計はあなたの会社の財務責任者の一角として、全力で関わらせていただく会計事務所です。
正しい税務はもちろん、社長であるあなたのビジョンをしっかりと理解し、その実現に向けて資金調達や経営判断など、積極的にご提案させていただきます。
初回相談は無料とさせていただいていますので、ぜひ1度気軽にご相談ください。