今回はマイクロ法人におすすめな事業・業種について解説していきます。
マイクロ法人は主に個人事業主の社会保険料の負担を軽減するために設立される小規模な法人です。
上手く活用すれば負担を大幅に減らせるスキームだということで、多くの個人事業主の関心を集めています。
そこで今回は、マイクロ法人におすすめな事業・業種やメリット、デメリットについて詳しく解説していきましょう。
マイクロ法人とは
マイクロ法人とは、小規模な事業を営むために設立される法人です。
もしくは冒頭でもお話ししたとおり、個人事業主が社会保険料の負担を軽減するために法人を設立するスキームのことを指します。
マイクロ法人スキームは、メインの事業から一部の事業を切り離し、小規模なマイクロ法人を設立したうえで役員報酬を最低限に抑えることで社会保険料を大幅に削減する、という仕組みです。
メインの事業でしっかりと収入を得つつ、マイクロ法人を設立することで最低限の社会保険料支払いで済ませられるので、使い方によっては大きな効果を期待できます。
ただし、実態のない事業であったり、メイン事業ときっちり分けられていない事業であったりする場合はマイクロ法人スキームを使えないので注意してください。
たとえばライターとして複数社から仕事を請けていて、A社からもらう仕事の分だけ法人化しよう、というのはNGです。
一方、ライターとSNS運用代行をしていて、SNS運用代行の仕事だけをマイクロ法人として切り分ける、ということであれば問題ありません。
このように事業の一部を法人化して、役員報酬を最低限に抑えることで社会保険料を大幅に下げるのがマイクロ法人スキームです。
マイクロ法人設立のメリット
マイクロ法人を設立するメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- 社会保険料や所得税の負担を抑えられる
- 使える経費の幅が広がる
- 社会的な信用度が上がる
1つずつ詳細を解説していきましょう。
メリット1.「社会保険料や所得税の負担を抑えられる」
もっとも大きなメリットと言えるのが、前述したとおり社会保険料や所得税を抑えられる点です。
上手く活用すれば年間何十万円もの負担を減らすことができます。
たとえば個人事業主で所得が500万円あり、夫婦2人暮らしであった場合、国民健康保険料が約50万円、国民年金が約40万円の合計約90万円かかる計算です。
一方、事業の一部を切り離してマイクロ法人を設立し、役員報酬を72万円にして社保に加入し、配偶者を扶養に入れた場合、社会保険料が約8万円、厚生年金が約20万円で、合計約28万円の保険料で済みます。
このように個人事業主がマイクロ法人を作ることで、社会保険料を大幅に削減できるわけですね。
メリット2.「使える経費の幅が広がる」
マイクロ法人として法人化することで使える経費の幅が広がるというメリットもあります。
個人事業主から法人になることで使える幅が広がる経費は主に以下のとおりです。
- 住居費
- 出張手当
- 車両関連費
- 生命保険
- 退職金
ほかにも色々ありますが、とくに大きいのはこれらの項目ですね。
詳しくは別記事で詳しく解説しているので併せてご参照ください。
⇒法人化によって経費にできる範囲が広がる!個人事業主との違いとは?
メリット3.「社会的な信用度が上がる」
マイクロ法人として法人化することで、個人事業主と比べて社会的な信用度を上げることができます。
中には法人にしか仕事を発注しないという企業もあるので、請けられる仕事の幅が広がる可能性もあります。
ただマイクロ法人ということで売上や資本金はあまり大きくはしないので、普通に法人化することに比べると信用度の向上は限定的です。
マイクロ法人設立のデメリット
マイクロ法人を設立するデメリットとしては以下が挙げられます。
- 法人設立の手間や費用がかかる
- 赤字でも税金の支払いが発生する
- 税務が複雑になる
詳細を解説していくので、デメリットについてもしっかり把握しておきましょう。
デメリット1.「法人設立の手間や費用がかかる」
マイクロ法人とはいえ、法人の設立には手間や費用がかかります。
法人設立の手続きについては、以下のとおりです。
〇法人設立前に必要な手続き
- 会社の基本事項を決める
- 会社用の印鑑を用意する
- 定款を作成し、認証を受ける
- 資本金を払い込む
- 登記申請をする
〇法人設立後に必要な手続き
- 会社名義の銀行口座を開設する
- 個人事業の廃業手続きを行う
- 登記事項証明書、印鑑証明書を取得する
- 法人設立届出書を提出する
- 社会保険、労働保険の加入手続きを行う
また法人設立にかかる費用は、株式会社で18万円~24万円程度、合同会社で6万円~10万円程度です。
法人設立の手続きや費用については別記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
⇒個人事業主から法人化する手続きを流れで解説!かかる費用や時間は?
デメリット2.「赤字でも税金の支払いが発生する」
「赤字でも納税しなければならなくなる」というのもマイクロ法人設立のデメリットです。
法人住民税には、法人であれば赤字であってもすべてのものが納めなければいけない均等割というものがあります。
そのためマイクロ法人を設立することで、赤字であっても最低7万円の法人住民税が発生してしまうのです。
また当然ながら、マイクロ法人として切り分けた事業の調子が良くなって売上が上がってしまった場合は、その分法人税や法人住民税の支払いが生じてしまいます。
全体の売上によっては累進課税で支払う所得税よりも法人税の方が税率が高くなってしまうケースもあるので、マイクロ法人スキームを実践するときは、このような税金についても計算に入れておかなければいけません。
デメリット3.「税務が複雑になる」
個人事業主の確定申告と比べて、法人の税務はかなり複雑です。
とくに個人事業主としての確定申告を自分でやっていた場合、そのまま自分でマイクロ法人分の税務をしようと思うとかなりの手間になるでしょう。
かといって税理士と顧問契約を結んだり経理担当を雇ったりするとその分の費用がかかるため、場合によってはマイクロ法人を設立する意味自体がなくなってしまう可能性もあります。
マイクロ法人を設立するときは、そのあたりもしっかり計算しておきましょう。
マイクロ法人におすすめの事業・業種
マイクロ法人を設立するのにおすすめな事業の特徴としては以下が挙げられます。
- 在庫・仕入れが少ない事業
- 設備投資が不要な事業
- オフィスがいらない事業
これらの特徴を踏まえ、マイクロ法人と相性が良いのは以下のような業種です。
- アフィリエイター・ブロガー
- SNS運用
- インフルエンサー
- ネット販売
- マッサージ・整体
- フードデリバリー
- 投資関連(株式、FX、仮想通貨、NFTなど)
- その他フリーランス(ライター、エンジニアなど)
これらの事業をメイン事業から切り分けられそうであれば、マイクロ法人の設立を検討してみても良いでしょう。
自己判断でマイクロ法人を設立するのは危険
マイクロ法人スキームについて解説をしてきましたが、自己判断でマイクロ法人を設立してしまうのは危険です。
ここまでお話ししてきたとおり、マイクロ法人の設立にはデメリットも存在しているからです。
とくに状況によっては、むしろ損をしてしまうことさえあり得ます。
そのためマイクロ法人スキームを活用したいなら、事前にプロに確認してから動き出すのがおすすめです。
池上会計では、法人化に関するお問い合わせについては初回無料で承っています。
マイクロ法人設立を検討しているなら、ぜひ1度ご連絡ください。
【まとめ】マイクロ法人設立はよく考える必要あり!
今回はマイクロ法人設立によるメリット・デメリットや向いている事業・業種について解説をさせていただきました。
マイクロ法人スキームは、確かに社会保険料を大きく削減できる可能性がある方法です。
しかし必ずしも得になるというわけではありませんし、法人を設立することのデメリットも存在しています。
そのため安易にマイクロ法人を設立せずに、プロにも相談しながらしっかりと検討することが重要です。
もしあなたもマイクロ法人スキームを考えているなら、インフルエンサーなどの言葉をそのまま鵜呑みにするのではなく、よく考えてから実践するようにしましょう。