今回は、「会社名の決め方」について解説していきます。
会社を設立するとき、意外と悩むのがその会社の名前(商号)です。
会社の顔となるものですからこだわりを持ちたくなる一方で、イマイチ決め方がわからないものですよね。
実は会社名は自由に決められるものではなく、いくつか守らなければいけないルールが存在しています。
そこで今回は、会社名を決めるうえで知っておくべきルールや、決めるときのアイディアの出し方について解説していきましょう。
会社名(商号)と屋号の違い
まず知っておいてほしいのが、会社名(商号)と屋号の違いです。
会社名(商号)はその名のとおり、法人が登記するときに使う名前のことを指します。
一方屋号は、個人事業主が自分のお店に付ける名称です。
まず今回の記事を読むうえで、このことは押さえておいてください。
会社名を決める前に確認すべきルールとポイント
ここからは会社名を決めるうえで重要な「絶対に守るべきルール」と「押さえておきたいポイント」を解説していきます。
会社名を決めるうえでは前提となる部分なので、しっかり把握しておいてください。
絶対に守るべきルール
会社名を決めるさいに、以下のルールを厳守する必要があります。
- 会社名の前後どちらかに会社の種類を含めること
- 同一住所で同じ会社名は使用できない
- 文字・符号は使えるものが決まっている
- 使用できない単語は使わない
- 競合他社と同じ、もしくは似た名称は使わない
ここを押さえておかないと、会社設立が認められなかったり、後々トラブルになったりする可能性があるので注意しなければいけません。
それでは1つずつ解説していきましょう。
ルール1.「会社名の前後どちらかに会社の種類を含めること」
会社名には、会社の種類に応じた法人格を入れなければいけません。
法人格とは「株式会社」、「合同会社」、「合資会社」、「合名会社」などの会社形態のことです。
要は株式会社が「〇〇」という会社名を付けたい場合、「〇〇株式会社」もしくは「株式会社〇〇」にしなければいけないということですね。
会社名の前後どちらに入れるかは自由なので、好みや覚えやすさ、言いやすさなどで決めてください。
ルール2.「同一住所で同じ会社名は使用できない」
同じ住所で同じ会社名を登記することはできません。
たとえばシェアオフィスやバーチャルオフィスで登記する場合、複数の企業が同じ住所で登記することになるので、会社名が被ることが稀に起こります。
もし複数企業が使う住所で登記するつもりなら、その住所に使いたい名称の会社がないか事前に確認しておきましょう。
ルール3.「文字・符号は使えるものが決まっている」
会社名で使える文字・符号には制限があります。
具体的には、以下のもの以外は使用できません。
〇文字
- 漢字
- ひらがな
- カタカナ
- 英文字(大文字、小文字)
- アラビア数字(1,2,3~といった数字)
〇符号
- 「&」(アンパサンド)
- 「’」(アポストロフィー)
- 「,」(コンマ)
- 「-」(ハイフン)
- 「.」(ピリオド)
- 「・」(中点)
これら以外の文字を含む会社名では登記できないので注意してください。
たとえば「♪」や「☆」といったマークを入れたり、絵文字を入れたりはできません。
ルール4.「使用できない単語は使わない」
会社名には使えない単語も存在します。
具体的には、会社の一部を示す「支店」、「支社」、「部門」という単語は会社名に使用できません。
また「銀行」、「保険」、「信託」、「学校」という単語については、その事業を行っている会社だけが使用できるので、その点も注意してください。
ルール5.「競合他社と同じ、もしくは似た名称は使わない」
これは法律で縛られている条件ではありませんが、競合他社と同じ、もしくは似た名称を使わないようにしましょう。
同一住所でなければ、法律上は他社と同じ会社名を付けることに問題はありません。
しかし、同じようなサービスを取り扱っている会社や住所が近い会社と同じ、もしくは似た会社名にすると、トラブルが発生する可能性があります。
もしくは知名度にあやかりたいという一心で有名企業と同じ名称にするのもおすすめはできません。
最悪、商標権侵害や不当競争防止法で訴えられる可能性もあります。
会社名を決めるさいには「登記情報提供サービス」と「特許情報プラットフォーム」で、同じ、もしくは似た会社名や商標がないことをチェックしておきましょう。
押さえておきたいポイント
守るべきルールのほかに、会社名を決めるさいには以下のような押さえておきたいポイントもあります。
- 覚えやすい会社名にする
- ドメインが取得できるか確認しておく
- 海外向けの表記も考えておく
ポイントについても1つずつ解説していきましょう。
ポイント1.「覚えやすい会社名にする」
会社名を決めるさいは、覚えやすいことを意識しましょう。
たとえば発音しにくかったり、長すぎたりする会社名は親しみにくいので避けるべきです。
また造語を作る場合は、きちんと初見でも読めるようにカタカナ表記にしておいた方が無難でしょう。
事業や理念にちなんだ会社名にすると、事業内容も一緒に浸透しやすくなるのでおすすめです。
ポイント2.「ドメインが取得できるか確認しておく」
会社を設立するなら多くの場合、自社のコーポレートサイトを作成すると思うので、会社名でドメインが取得できるかどうかも確認しておきましょう。
同じ会社名の法人がいると、使いたいドメインをすでに使われている可能性があります。
もちろん、必ずしも会社名と同じドメインを使う必要はありませんが、こだわりがある場合は先にドメインを取得しておくと良いでしょう。
ポイント3.「海外向けの表記も考えておく」
会社名を決めるさいは、海外での表記についても想定しておいてください。
事業のグローバル展開を考えているなら必須ですし、そうでなくても今の時代、海外向けに展開することになってもおかしくありません。
発音や意味によっては、海外ではマイナスイメージを与えてしまう言葉もあるので注意が必要です。
とくに進出する国が想定できているなら、表記がその国で問題ないか事前に確認しておきましょう。
困ったときの会社名の決め方7選【アイディア、事例】
どうしても会社名のアイディアが出てこなくて決められない……という場合は、以下の決め方を参考にしてみてください。
- 事業内容や理念、経営方針から会社名を決める
- 創業者の名前や会社の所在地から会社名を決める
- 商品やサービスをそのまま会社名にする
- 造語をつくる
- 縁起の良い言葉を入れる
- プロに名付けてもらう
- 一般公募する
これらを駆使すれば、良いアイディアも浮かんでくるはずです。
1つずつ、具体的なアイディアの出し方をネーミング事例も交えて解説していきましょう。
会社名の決め方1.「事業内容や理念、経営方針から会社名を決める」
あなたの会社の事業内容や理念、経営方針などから会社名を決めるのもありです。
たとえばユニクロ、GUなどを運営している「株式会社ファーストリテイリング」は、「ファーストフードのように早い小売業」という理念が会社名の由来となっています。
会社名の決め方2.「創業者の名前や会社の所在地から会社名を決める」
創業者の名前や特定の地域をそのまま会社名にする企業は意外と多いです。
たとえば創業者が田中であれば「TNK」という会社名にする、というように少しイジるケースもよく見ます。
創業者の名前を社名にした有名企業でいうと、「株式会社マツモトキヨシ」はまさにそのまま、創業者である「松本清」氏の名前から名付けられました。
会社名の決め方3.「商品やサービスをそのまま会社名にする」
商品やサービスの名称をそのまま会社名にするのも1つの手です。
商品と会社をより連想してもらいやすくなるメリットがあります。
たとえば「エースコック株式会社」はもともと「梅新製菓株式会社」という会社名でしたが、「料理の上手な優れたコックさん」=「コックのエース」=「エースコック」という製品名に由来して、1964(昭和39)年9月に会社名を変更しました。
会社名の決め方4.「造語をつくる」
意味のある言葉を掛け合わせて造語をつくる企業も多くあります。
造語なので、オリジナリティを出せるのがメリットです。
たとえば大きなところでは、カルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」を組み合わせて造語をつくった「カルビー株式会社」が事例として挙げられます。
会社名の決め方5.「縁起の良い言葉を入れる」
繁栄を願って縁起の良い言葉を会社名に取り入れるのも1つのアイディアです。
たとえば「株式会社バンダイナムコエンターテイメント」の「バンダイ」は、「萬代不易(ばんだいふえき)」という中国の古典に登場する言葉から来ています。
ちなみに「萬代不易(ばんだいふえき)」の意味は、永遠に変わらないことです。
企業が長く存続するように、という願いが込められているのでしょう。
会社名の決め方6.「プロに名付けてもらう」
自分で会社名を決められないなら、プロに決めてもらうこともできます。
たとえば経営コンサルタントに相談してみたり、プロの占い師に相談してみたり、ですね。
「占い師に決めてもらうなんてどうなんだ?」と思われるかもしれませんが、経営者の中には占い師を頼る人が意外と多いです。(オフィスに神棚が祀られている会社も多いです)
どうしても会社名を決められないなら、1度お試しで占い師に相談してみるのも良いでしょう。
会社名の決め方7.「一般公募する」
会社名を一般公募するのも1つの手段です。
たとえば日頃お世話になっているお客様から公募して、採用されたらクーポンをお渡しするような施策も面白いかもしれません。
よりお客様との結びつきが強くなり、常連獲得に繋がる可能性があります。
あとはとにかく候補がたくさんほしいなら、クラウドソーシングサイトで募集してみるのもありです。
採用されたら料金を支払うコンペ形式で募集すると良いでしょう。
会社名はあとから変更もできる
会社名を決めるときは悩んでしまいがちですが、会社名自体はいつでも変更可能です。
あるていどブランドが構築されてしまうと会社名の変更は難しくなってくるかもしれませんが、それまでは猶予があるという考え方もできます。
実際、以下のように会社名を変更した企業も多いです。
- 「健康コーポレーション株式会社」→「RIZAPグループ株式会社」
- 「梅新製菓株式会社」→「エースコック株式会社」
- 「松下電器産業株式会社」→「パナソニック株式会社」
事業内容や企業規模、もしくは時勢によっても最適な会社名は変わってくるものなので、その都度会社名について検討し、必要であれば変更するのもありでしょう。
【まとめ】法人化するなら会社名からしっかり考えよう
今回は会社名の決め方について解説をしてきました。
会社名は会社の顔とも言えるものです。
法律上守らなければいけないルールもありますし、押さえておくべきポイントもあるので、しっかり考えて決める必要があります。
とはいえ途中で変更することもできるので、あまりに決まらないようならプロに頼ってみたり、一般公募してみたりするのもありではないでしょうか。
ちなみに池上会計では、面倒な会社設立の手続きを丸投げできるプランをご提供しています。
実際のところ、法人化の手続きには手間がかかるため、自分でやるくらいならその分本業に力を入れた方が結局得になることの方が多いです。
法人化を考えているなら、ぜひ下記より詳細をご確認ください。